2025/08/28 解説記事|労務管理
労使協定の締結や就業規則の作成・変更に欠かせないのが「従業員代表」です。
しかし、従業員代表の選出を誤ると、協定そのものが無効となり、企業に法的リスクが生じる可能性があります。
今回は、従業員代表の役割と正しい選出方法について整理し、実務で起こりがちな事例も交えて解説します。
従業員代表の役割
従業員代表は、従業員の意見を集約して企業と協議する重要な役割を担います。主な役割は以下のとおりです
- 労使協定の締結
例:36協定(時間外・休日労働に関する協定)を会社と結ぶときに署名する。 - 就業規則作成・変更に伴う意見書提出
例:労働時間の短縮制度を新設する際、従業員の意見を反映させた意見書を会社へ提出する。
従業員代表になれる人の条件
従業員代表は誰でもなれるわけではありません。次の条件を満たす必要があります
- 全従業員(正社員・契約社員・パート含む)の過半数を代表すること
- 民主的な手続きで選ばれていること(投票、挙手、回覧など)
- 管理監督者ではないこと(経営者と一体的に労務管理を行う立場の人は不可)
正しい選出手続きの流れ
従業員代表の選出は「事業場単位」で行う必要があります。具体的な手続きの流れは以下のとおりです
- 候補者を募る
→ 目的(例:36協定の締結)を明確にし、全従業員に候補者を公募する。 - 意思確認を実施
→ 投票や挙手などで、全従業員(管理監督者も含む)から支持を得る。
※「メールで案内→返信なしを賛成とみなす」方法は無効。必ず直接確認が必要。 - 過半数の支持を得た人を代表に選出
→ 事業場ごとに選出が必要。
事例:適正に選出しなかった場合のリスク
ある製造業の企業では、社長が「信頼できるから」という理由で管理職を従業員代表に指名しました。
その後、36協定を結び時間外労働を命じましたが、後に労基署の調査で「従業員代表の選出が不適正」と指摘され、協定は無効と判断されました。
結果として、法定外労働をさせたことが労基法違反となり、是正勧告を受ける事態に…。
教訓:企業が恣意的に選んだ代表では無効。民主的手続きを踏むことが必須です。
企業に求められる配慮
- 従業員代表に対する 不利益取扱いの禁止(降格や減給はNG)
- 意見集約のために必要な 事務機器やスペースの提供
従業員代表が安心して役割を果たせるよう、企業側の支援体制も大切です。
まとめ
従業員代表は、労使協定や就業規則を適正に運用するうえで欠かせない存在です。
不適正な選出は企業に法的リスクをもたらすため、必ず民主的手続きを踏んで選出することが重要です。
従業員が安心して働ける環境づくりの第一歩として、従業員代表制度を正しく運用しましょう。
👉 労務管理に関するご相談は専門家へ
当事務所では、36協定や就業規則作成に必要な従業員代表の選出支援も行っています。
お気軽にご相談ください。
👉 初回相談無料・お問い合わ