介護業界では、「介護職員処遇改善加算」を原資とした手当を支給している事業所が多くあります。
では、この手当は時間外労働や休日労働に支払う割増賃金の計算基礎に含める必要があるのでしょうか。
割増賃金の算定基礎から除外できる賃金とは?
労働基準法第37条および労働基準法施行規則第21条では、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金を限定列挙しています。
具体的には以下のとおりです。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらに該当する場合のみ、割増賃金の計算基礎から除外できます。
介護処遇改善加算を原資とする手当は?
介護処遇改善加算を原資とする手当は、上記のいずれにも該当しません。
したがって、割増賃金の計算基礎に含める必要があると考えられます。
つまり、処遇改善加算を原資とした「処遇改善手当」や「特別手当」も、時間外労働や休日労働を行った場合の割増賃金の基礎額に算入しなければならないということです。
【事例】処遇改善手当を支給している介護事業所
ある介護事業所では、毎月一律 30,000円の処遇改善手当を介護職員に支給しています。
この事業所では「処遇改善手当は国からの加算だから、割増計算には含めなくて良いのでは?」と疑問がありました。
しかし、処遇改善手当は「通勤手当」や「住宅手当」など除外対象に当たらないため、割増賃金の計算基礎に含める必要があります。
たとえば、基本給200,000円、処遇改善手当30,000円を支給している職員が時間外労働をした場合、
割増賃金の算定基礎額=230,000円となり、この額を基に時間外手当を計算する必要があります。
まとめ
- 割増賃金の計算基礎から除外できる手当は法律で限定されています。
- 介護処遇改善加算を原資とする手当は、その除外項目に該当しません。
- よって、割増賃金の計算基礎に含める必要があると考えられます。
介護業界の労務管理では、この点を誤解しているケースも多く見受けられます。
加算を活用した賃金設計を行う際は、割増賃金の計算ルールを正しく理解することが重要です。
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