2025/08/29 行政資料・リーフレット
各省庁から来年度の税制改正要望が公表される時期となり、令和7年8月29日、厚生労働省から「令和8年度 厚生労働省税制改正要望について」という資料が公表されました。
今回は、医療機関・企業の税制に関わる重要な要望が多く含まれています。
厚労省の主な税制改正要望
厚労省から示された主な項目は次のとおりです。
- 地域医療構想実現に向けた税制上の優遇措置の延長及び拡充
- 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長
- 重点医師偏在対策支援区域で承継・開業する診療所への税制上の支援
- 社会医療法人等が行う訪日外国人の自由診療に係る診療費要件の緩和
- セルフメディケーション推進のための医療費控除の特例措置の拡充
- 試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充及び延長
- 企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長
注目すべき「企業年金等に対する特別法人税」の取扱い
企業年金は従業員の老後の生活を支える制度であり、安定した積立が重要です。
しかし、企業年金の積立金には「特別法人税」が課税される仕組みが存在し、現在は課税停止措置が講じられています。
厚労省はこの「撤廃」または「課税停止措置の延長」を要望しています。
もし課税が復活すれば、企業年金制度の維持に負担がかかり、従業員の福利厚生にも影響を及ぼす可能性があります。
事例:医療法人での対応
ある中規模の医療法人では、職員の定着と安心を目的に「確定給付企業年金」を導入しています。
仮に特別法人税が復活すると、毎年数百万円規模の税負担が発生し、制度の維持自体が難しくなる恐れがありました。
法人側としては「退職金規程を見直して制度を縮小するか」「企業型確定拠出年金に移行するか」などの検討を余儀なくされることになります。
今回の要望により、課税停止の延長や撤廃が実現すれば、従業員の安心した老後設計を守ることにつながります。
まとめ
令和8年度の厚労省の税制改正要望は、医療・企業経営双方に大きく影響する内容が多く含まれています。
特に企業年金への特別法人税の取扱いは、従業員の福利厚生や人材定着に直結する重要なポイントです。
今後の税制改正の行方に注目しつつ、労務管理や退職金制度の整備を検討していくことが求められます。
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