外国人技能実習生を子会社に在籍出向させたいと考える企業様からご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げると、出向の目的が技能実習制度の基本理念に沿わないため、子会社への在籍出向は難しい可能性が高いといえます。
在籍出向とは?
在籍出向とは、従業員が出向元の企業に在籍したまま、別の企業(出向先)で勤務する形態を指します。
この場合、出向元・出向先の両方と労働契約関係が成立します。
ただし、職業安定法では「労働者供給事業」が禁止されており、在籍出向が認められるためには、以下のような目的で行われる必要があります。
- 従業員を離職させるのではなく、関係会社で雇用機会を確保する
- 経営指導・技能指導を実施する
- 職業能力開発の一環として行う
- グループ内の人事交流の一環として行う
技能実習制度との関係
外国人技能実習制度の基本理念は、「発展途上国等への技能移転を通じた国際貢献」です。
一方、子会社への在籍出向は グループ内の人事交流や雇用確保 を目的とするものであり、制度の趣旨と一致しません。
そのため、外国人技能実習生を子会社に在籍出向させることは困難と考えられます。
不適切な取扱いは、監理団体や受入企業に対して行政指導や受入停止などのリスクを招く可能性があります。
制度改正について
2024年の法改正により技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されました。
2025年現在は移行期にあり、今後は育成就労制度の趣旨に照らした運用が求められます。
出向や配置転換の可否も、新制度を踏まえて慎重に検討する必要があります。
事例
ある製造業の企業様から次のような相談がありました。
「本社で受け入れている技能実習生を、繁忙期の子会社工場に在籍出向させたい」
しかし、このケースでは「人事交流」「雇用確保」が目的となり、技能実習制度の趣旨に合致しないため、出向は認められない可能性が高いと判断されました。
結果として、その企業は子会社で新たに技能実習生を受け入れる手続きを取り直すことになりました。
まとめ
- 外国人技能実習生を子会社に在籍出向させることは、制度趣旨と相容れず困難
- 出向は労働者供給事業に該当しない目的で行う必要がある
- 制度改正(育成就労制度)により、今後の運用も変化していく
制度の誤った運用は、企業にとって大きなリスクにつながります。外国人雇用について不安がある場合は、専門家にご相談ください。
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