企業経営において最も避けたいトラブルのひとつが、従業員による横領や詐欺などの不正行為です。
万が一、不正の事実が発覚し、本人が事実を認めた場合には、「自認書」 を作成し、証拠を残すことが重要です。
自認書とは?
自認書とは、従業員本人が自らの行為を認め、その内容や金額を明らかにするための書面です。
口頭で「やりました」と言っただけでは後に否認されるリスクがあり、会社としても損害額を立証することが困難になります。
そのため、事実関係と金額を明確に記載した自認書を取得することが、法的リスクの軽減につながります。
自認書に記載すべき内容
一般的には以下の内容を盛り込みます。
- 不正を行った日付
- 不正行為の態様(具体的な方法)
- 不正により得た金額
- 本人氏名・署名・押印・日付
※会社の指定フォーマットを用意しておくと、スムーズに対応できます。
事例①:横領の場合
ケース
営業担当者が売掛金を回収した際、偽造領収書を用いて差額を自分の口座に入金していた。
自認書の記載例(抜粋)
横領を行った日 | 横領行為の態様 | 金額 |
---|---|---|
20○○年○月○日 | 株式会社Aの売掛金を偽造領収書により回収し、差額を自己口座に入金 | 50,000円 |
20○○年○月○日 | 株式会社Bの売掛金を偽造領収書により回収し、差額を自己口座に入金 | 100,000円 |
事例②:詐欺の場合
ケース
従業員が実際には使っていない通勤経路を申請し、通勤手当を不正に受給していた。
自認書の記載例(抜粋)
騙し取った日 | 詐欺行為の態様 | 金額 |
---|---|---|
20○○年○月○日 | 虚偽の通勤経路を申請し、通勤手当を騙し取った | 14,000円 |
20○○年○月○日 | 虚偽の通勤経路を申請し、通勤手当を騙し取った | 14,000円 |
実務上の留意点
- 任意性の確保
本人の自由意思で署名・押印させることが重要です。脅迫的な言動は無効につながります。 - 損害賠償請求の根拠に
自認書は、会社が損害賠償請求や刑事告訴を行う際の重要な証拠となります。 - 就業規則との整合性
懲戒処分を行う場合は、必ず就業規則に定められた手続きに基づき進める必要があります。
まとめ
従業員の不正行為は、企業にとって重大なリスクです。
事実を認めた場合には、速やかに自認書を作成し、証拠を残すことが不可欠です。
企業としては、未然防止のための内部統制や監査体制を整えると同時に、万一の際には冷静かつ適切に対応することが求められます。
✅ 労務トラブルの対応に不安がある方は、ぜひ専門家へご相談ください。