従業員が逮捕された場合、会社としては動揺する場面ですが、すぐに懲戒処分を下すのは非常に危険です。
適切な対応をしないと、不当解雇・損害賠償などのリスクが発生する可能性があります。
この記事では、従業員が逮捕された場合の会社としての対応の全体像を整理します。
社労士・弁護士と連携し、冷静な対応を心がけましょう。
1. まずやるべきことは情報収集
逮捕の連絡は、通常は家族や弁護人から会社に入ることが多いです。
この段階で大切なのは、慌てずに次の情報を収集することです。
- 逮捕された日時・場所
- 身柄が拘束されている場所(警察署や拘置所)
- 接見禁止の有無
- 弁護人の連絡先
接見禁止でなければ、会社の担当者が面会に行き、業務上必要な確認や書類の受け渡しも可能です。
2. 懲戒処分や解雇は慎重に
逮捕時点
逮捕されただけでは、まだ犯罪が確定したわけではありません。
この段階で懲戒解雇などを行うと、懲戒権の濫用と判断される可能性があります。
判決確定後
有罪判決が確定すれば、懲戒処分や解雇の検討が可能ですが、必ずしも有効になるわけではありません。
判断ポイントは以下です。
- 犯罪行為が業務と関係しているか
- 会社の信用や職場秩序を損なったか
- 業種の公益性が高いかどうか(医療・金融などは厳しめ)
3. 合意退職を選ぶ場合の注意点
判決前に労働契約を解消したい場合は、懲戒解雇ではなく合意退職を検討します。
ただし、合意退職は以下に注意してください。
- 自由意思による同意が必要(誤解や脅しは禁止)
- 労働者に利益のある条件を提示する(例:退職金上乗せ、再就職支援、被害弁償の免除)
- 月額賃金の3〜6か月分程度の特別退職金を用意すると、後日のトラブルを防ぎやすい
4. 勤怠管理と休職の扱い
- 逮捕中は 欠勤扱い が基本
- 起訴後は、就業規則に基づき「起訴休職」を発令できる場合あり
- 保釈や在宅起訴で出社可能な場合は、自宅待機命令を出すことも可能(賃金支払いが必要)
5. 社内・社外への説明
- 同僚や取引先には詳細を伝えないのが原則
- 場合によっては「業務都合により欠勤」と説明
- マスコミ対応や被害者対応は、必ず弁護士と連携する
まとめ
従業員が逮捕された場合、会社は次の流れで冷静に対応しましょう。
- 家族・弁護人と連携し、情報を収集する
- 逮捕時点での懲戒解雇は避ける
- 合意退職を検討する場合は、自由意思とメリット提供が必須
- 勤怠管理・休職規定を適切に運用する
- 社内外への説明は最小限にし、弁護士と連携する
逮捕事案は、労務・法務の両面からの慎重な対応が必要です。
万一の際には、社労士や弁護士に早めに相談しましょう。