就業規則において、有給休暇取得日の賃金を「通常の賃金」と定めている場合、
残業予定がある日の有給取得時の賃金はどうなるのでしょうか?
1. 事例で考える
事例:
- 時給制の従業員
- 所定労働時間:1日8時間
- その日は、あらかじめ1.5時間の残業を命じていた
- 従業員はその日を有給休暇で休んだ
質問:この日の賃金は 8時間分のみで良いのか? 9.5時間分を払う必要があるのか?
2. 法律上の考え方
労働基準法では、有給休暇取得日の賃金は以下のいずれかで支払うことが義務づけられています(労基法第39条)。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 標準報酬月額の30分の1に相当する金額
さらに、労働基準法施行規則第25条では、
「通常の賃金」とは、所定労働時間に応じて支払う賃金とされています。
3. 結論
就業規則に「通常の賃金」としか記載がない場合は、
所定労働時間である8時間分の賃金のみを支払えば足ります。
- 有給休暇は「所定労働時間分」を保障する制度
- あらかじめ残業を命じていたとしても、その分は支払う義務はない
4. 就業規則に特別な定めがある場合
一方で、就業規則に「通常の賃金」を労働者に有利な方法で定義している場合、
例えば以下のように記載されていれば、その内容に従う必要があります。
例:有給休暇取得日の賃金は、当該日に予定されていた時間外労働分を含めて支給する
5. 実務対応のポイント
- 就業規則の「通常の賃金」の定義を確認する
- 特段の定めがなければ、所定労働時間分だけ支給で問題なし
- 残業を含めるかどうかは、会社の任意(労働者に有利なら可)
根拠法令
- 労働基準法 第39条(年次有給休暇)
- 労働基準法施行規則 第25条
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有給休暇や残業代の取り扱いは、就業規則次第で判断が変わる場合があります。
適切な運用でトラブルを防ぎたい事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。