社員に対して減給処分を行う場合、労働基準法には「減給額の上限」が定められています。
同じ月に複数回の減給処分が重なった場合でも、無制限に給与から天引きすることはできません。
今回は、上限額の考え方と、上限を超える場合の処理方法を解説します。
減給処分の上限とは?
労働基準法第91条では、減給処分(制裁)の上限を次のように定めています。
- 1回の事案につき、平均賃金の1日分の半額まで
- 1回の賃金支払期における総額の10分の1まで
つまり、同じ月に複数回の減給があっても、その合計が 給与総額の10分の1を超えてはいけない ことになります。
事例で確認してみましょう
事例
ある社員の月給が30万円の場合、平均賃金の1日分は1万円とします。
- 1回目の遅刻常習により、減給5,000円
- 2回目の業務上の過失により、減給5,000円
- 3回目の無断欠勤により、減給5,000円
この場合、合計15,000円の減給となります。
上限額の確認
- 月給30万円 × 10分の1 = 3万円
- 合計減給額は15,000円なので、上限以内 → 全額天引き可能
上限を超える場合は?
もし減給処分の合計が月給の10分の1を超えた場合は、翌月以降の給与に繰り越して天引き する必要があります。
例:
月給20万円の社員に、減給処分が合計25,000円発生した場合
- 上限:20万円 × 10分の1 = 20,000円
- 当月天引き可能額:20,000円
- 残り5,000円は 翌月に繰り越して天引き
根拠法令
- 労働基準法 第91条(制裁規定の制限)
- 昭和23年9月20日 基収1789号
ひらおか社会保険労務士事務所では、就業規則の見直しや減給処分の適法な運用についてもサポートしています。
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