労務管理

試用期間の延長は就業規則に定めがないとできないの?

試用期間の延長については、必ずしも就業規則に定めがなければできないというわけではありません。
結論から言うと、従業員にとって有利な場合で、かつ本人と個別に合意があれば、就業規則に定めがなくても延長は可能です。

法的な考え方

労働契約においては、個別に合意した労働条件が就業規則より不利な場合、その不利な部分は無効となり、就業規則の定めが優先されます。
逆に、労働者にとって有利な条件であれば、就業規則に書かれていない内容でも、双方の合意により設定できます

延長が「有利」になるケース

試用期間の延長が認められるかどうかは、それが労働者にとって有利か不利かによって判断されます。

  • 有利な場合
     本採用の基準に達していないため、本来は不採用(解雇)になるところを、もう少し様子を見るために試用期間を延長するケース。
     ➡ 本採用のチャンスが与えられるので「有利」とされ、合意があれば延長可能。
  • 不利な場合
     本採用の基準を満たしているのに、会社側の都合で試用期間を延長するケース。
     ➡ 待遇改善が先延ばしになるため「不利」とされ、認められません。

事例

事例1(延長が認められる)
製造業A社では、新入社員のBさんが業務に慣れるのに時間がかかっていました。本来なら3か月の試用期間終了時点で本採用可否を判断しますが、上司は「もう少し見たい」と判断。Bさんも「頑張りたい」と希望したため、1か月延長して評価することにしました。
→ 本採用の機会を与えるための延長であり、Bさんにとって有利なため認められます。

事例2(延長が認められない)
同じくA社で、Cさんは試用期間中の評価が十分で、本採用基準を満たしていました。しかし、繁忙期で本採用手続きを後回しにするために2か月延長しました。
→ 待遇改善が遅れるためCさんに不利となり、認められません。

実務ポイント

  1. 試用期間の延長を行う場合は必ず本人の同意を得る
  2. 合意内容は書面(覚書や合意書)で残す
  3. 延長の理由を明確にし、評価基準や期間を示す

まとめ
就業規則に定めがなくても、労働者にとって有利であれば個別合意により試用期間を延長できます。
ただし、不利な延長は原則できませんので、延長理由と合意の有無が重要です。


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