企業が従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合、必ず押さえておかなければならない手続きが36協定(サブロク協定)の締結・届出です。
この記事では、36協定の基本、届出の流れ、違反した場合のリスク、実務上の注意点まで、社労士の視点で詳しく解説します。
■36協定とは?
36協定の正式名称は、
「時間外労働・休日労働に関する協定届」です。
企業が従業員に対して、
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせる
- 法定休日(1週間に1日、または4週間に4日以上)に働かせる
こうしたケースでは、労働基準法第36条に基づき、事前に36協定を締結・届出する必要があります。
これを怠ると、どれだけ従業員が同意していても労基法違反となります。
■届出が必要になるタイミング
36協定の届出は、次のような状況で必要となります。
- 新たに時間外労働や休日出勤を命じる可能性があるとき
- 新規事業所の設立や初めての従業員採用時
- 既存の36協定が期限切れになる前(通常1年ごと更新)
特に、年度更新や従業員代表の変更を忘れると無届状態となり、違法残業が発生するリスクがあります。
■36協定を作成するときの2つの書類
36協定の作成時には、次の2つの書類をセットで作成します。
1. 36協定届
- 労働基準監督署に提出する届出書
- 書式は厚生労働省で定められています
- 労使双方(使用者と過半数代表)の署名または押印が必要
2. 労使協定書
- 企業と過半数代表の従業員で締結する書面
- 以下のような内容を明記
- 時間外・休日労働が必要な理由
- 延長できる時間数
- 特別条項がある場合の条件と手続き
- 書式は任意ですが、法定の記載事項を満たす必要あり
■36協定届と労使協定書を兼ねる場合
- 紙で届出する場合、36協定届に労使双方の署名または押印があり、内容が明確であれば労使協定書を兼ねることが可能です。
- しかし、電子申請では兼用不可のため、必ず労使協定書を別途作成してください。
■届出の方法と流れ
36協定届は、次のいずれかの方法で労働基準監督署に届出します。
- 持参:窓口で受理印をもらう方法(控えの返却あり)
- 郵送:控えに返信用封筒を同封すると受理印入り控えが返送されます
- 電子申請:「e-Gov」を利用。ただし労使協定書は別途作成必須
■違反した場合のリスク
36協定を締結・届出せずに時間外労働や休日出勤をさせた場合、労働基準法違反となります。
- 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 悪質・重大な場合は送検され、企業名が厚生労働省サイトで公表される可能性あり
実際に毎年公表される「労働基準関係法令違反に係る公表事案」には、
36協定未届や法定時間外の違法残業が数多く掲載されています。
■実務上の注意点(社労士POINT)
- 従業員代表の選出ミスに注意
- 管理監督者は代表になれません
- 公正な選出方法が必要です
- 更新忘れが多い
- 多くの企業で1年ごとに更新
- 更新忘れは無届扱いで違法残業に直結します
- 特別条項の乱用は危険
- 年720時間や月100時間未満など上限規制あり
- 実態に即さない協定は労基署から是正勧告の対象に
■まとめ
36協定の届出は、企業にとって労務リスクを回避する最低限のルールです。
無届や形式的な届出は、企業にとって大きなリスクとなります。
「自社の36協定は正しく届出されているか」
「特別条項の運用は適切か」
一度専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。