労務管理の現場でよくある疑問の一つが、
- 残業代を計算するときの「割増賃金の基礎」とは?
- 最低賃金の確認をするときの「対象賃金」とは?
という点です。
似ているようで、実は 除外できる手当の範囲が異なる ため、結果に差が出ることがあります。
誤解すると「残業代の未払い」や「最低賃金割れ」のトラブルにつながるため注意が必要です。
1. 割増賃金の基礎とは?
時間外・休日・深夜の割増率を計算するときに使う時給換算額。
除外できる手当:家族手当、通勤手当、住宅手当、臨時の賃金など。
2. 最低賃金の対象とは?
最低賃金額(地域別に定められる時給額)と比較するための時給換算額。
除外できる手当:精皆勤手当、通勤手当、家族手当、住宅手当、臨時の賃金など。
👉 割増賃金に比べて 除外できる手当が少なく、厳しめに計算される のが特徴です。
3. 実務での事例
事例①:手当が多いケース
- 基本給:138,000円
- 職務手当:10,000円
- 皆勤手当:20,000円
- 住宅手当:5,000円
- 合計:173,000円
- 所定労働時間:168時間
👉 割増賃金の基礎
(138,000+10,000+20,000+5,000) ÷168 = 約1,030円
👉 最低賃金の対象
(138,000+10,000+20,000) ÷168 = 1,000円
→ 両者に差は出ますが、いずれも最低賃金を上回っています。
事例②:住宅手当が大きいケース
- 基本給:148,000円
- 職務手当:20,000円
- 住宅手当:12,000円
- 合計:180,000円
- 所定労働時間:168時間
👉 割増賃金の基礎
(148,000+20,000+12,000) ÷168 = 約1,071円
👉 最低賃金の対象
(148,000+20,000) ÷168 = 1,000円
→ 割増賃金基礎では1,071円ですが、最低賃金の対象額では1,000円となり、大阪府の最低賃金1,064円を下回る可能性があります。
4. 実務担当者への注意点
- 最低賃金チェックはより厳しい基準
→ 除外できる手当が少なく、想定以上に低い時給になることがあります。 - 手当設計の工夫が必要
→ 住宅手当や精皆勤手当が大きいと「最低賃金割れ」リスクが高まります。 - 毎年の最低賃金改定で再確認
→ 地域別の最低賃金改定(例:大阪1,064円、東京1,113円 など)は毎年必ずチェックを。
まとめ
- 割増賃金の基礎と最低賃金の対象は 計算ルールが違う
- 特に最低賃金のチェックでは「住宅手当などが除外される」ため、数字が下がりやすい
- 手当の設計次第では「最低賃金割れ」が発生することもある
✅ 労務管理や給与計算のチェックに不安がある方へ
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