経歴詐称と懲戒解雇の関係
採用面接時に虚偽の申告(経歴詐称)が発覚した場合、会社としては「懲戒解雇できるのか?」という問題が生じます。
重要な経歴の詐称である場合には、懲戒解雇が認められることがあります。
重要な経歴詐称にあたる例
特に次のような経歴の虚偽は「重要な経歴の詐称」として判断されることがあります。
- 最終学歴(大学卒業の有無など)
- 職歴(管理職経験がないのに「課長経験あり」とする等)
- 犯罪歴(禁錮以上の刑歴を隠す 等)
実務上の注意点
ただし、経歴詐称があったとしても 必ずしも懲戒解雇できるとは限りません。
使用者が行った懲戒処分は、以下を満たさないと「権利濫用」とされて無効になる可能性があります。
- 客観的合理性:その行為が就労や業務に重大な影響を与えるかどうか
- 社会通念上の相当性:社会一般の感覚として処分が妥当といえるかどうか
また、懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に懲戒事由や懲戒手段を明記していることが前提となります。
事例:経歴詐称による懲戒解雇が有効とされたケース
ある企業で、採用面接時に「大卒」と申告していたが、実際には高校卒業であったことが判明しました。
この従業員は、学歴が採用基準の重要要件となっていたため、会社は懲戒解雇を行いました。
裁判所は「採用条件に直結する重大な虚偽申告であり、職務遂行や人材選考に重大な影響を与える」と判断し、懲戒解雇を有効としました。
まとめ
- 経歴詐称があったとしても、すべて懲戒解雇が有効になるわけではない。
- 採用基準に直結する「重要な経歴」であるかが大きな判断ポイント。
- 就業規則に懲戒事由を明記していることが必須。
経歴詐称が発覚した場合は、いきなり懲戒解雇に進むのではなく、事案の性質や影響度を慎重に見極めることが必要です。
📌 根拠法令・参考情報
- 労働契約法 第7条(権利濫用の禁止)
- 労働契約法 第15条(懲戒)
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