入社一時金と社会保険
採用活動の一環として「従業員紹介制度」を導入し、紹介によって入社した者に対して一時金を支給するケースがあります。
では、この入社一時金は社会保険の「賞与」に該当するのでしょうか?
社会保険上の「賞与」とは
社会保険における賞与とは、次のように定義されています。
「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」
(健康保険法第3条、厚生年金法第3条)
つまり、名称にかかわらず、労働の対価として支払われ、かつ3か月を超える期間ごとに受けるものは賞与として取り扱うことになります。
入社一時金が賞与にあたるケース
入社一時金についても、次のような場合は賞与に該当する可能性があります。
- 入社後、一定期間の勤続を条件に支給する場合
→「労働の対償」とみなされ、支給対象期間が3か月を超える場合は賞与と判断されることがあります。
事例
- 会社が「紹介入社一時金」として、入社3か月後に10万円を支給する制度を設けていた。
- この場合、3か月を超える勤続を条件にしているため、労働の対価としての性質が強く、社会保険上は賞与に該当する可能性が高い。
一方で、単なる「入社祝い金」として、雇用契約や労働の対価と無関係に支給する場合には、賞与に該当しないとされる場合もあります。
実務上の注意点
- 入社一時金の性質(労働の対価かどうか)を整理することが重要です。
- 「勤続期間を条件とする場合」は、社会保険上の賞与として賞与支払届の提出が必要になる可能性があります。
- 税務上の扱い(給与課税)とも関連するため、制度設計時には労務と会計の両面で検討することをおすすめします。
📌 根拠法令・参考情報
- 健康保険法 第3条(定義)
- 厚生年金保険法 第3条(用語の定義)
👉 採用時の一時金や紹介制度の設計、社会保険の取扱いにお悩みの場合は、専門家にご相談ください。
誤った処理は、後の調査や遡及対応につながるリスクがあります。