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試用期間中の解雇
事案の概要
被告(建築工事業)は、試用期間6か月として原告と労働契約を締結しました。
ところが、原告は試用期間中に逮捕・勾留され、弁護人を通じて「個人的事情により欠勤する」とだけ伝え、逮捕勾留の事実は知らせずに5日半欠勤しました。
これを受け、会社は就業規則(「試用期間中に社員として不適当と認められた場合は解雇する」等の規定)に基づき、弁護人を通じて解雇を通知。
その後、原告は釈放され、不起訴となったものの、解雇無効を主張して提訴しました。
裁判所の判断(東京地裁 令和5年11月16日判決)
裁判所は以下の理由から、本件解雇を有効と判断しました。
- 試用期間中の解雇の範囲
- 試用期間中は、通常の解雇よりも広い範囲で解雇事由が認められる。
- ただし「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当」である場合に限られる。
- 具体的判断
- 5日半の欠勤は、労働契約における最も基本的かつ重要な義務である就労義務を放棄した重大な違反。
- 突然の長期不在は会社に多大な迷惑をかけた。
- 逮捕・勾留の事実を隠したことは不誠実な対応と評価される。
これらを踏まえ、解雇は客観的に合理的で社会通念上も相当と認められるとしました。
実務上のポイント
- 試用期間中の解雇は、通常よりも広く認められますが、依然として「合理的理由」と「社会的相当性」が必要です。
- 特に「欠勤理由を正確に伝えなかった」ことは、信頼関係を著しく損なう行為とされる点に注意が必要です。
- 実務では、配偶者や親族が会社に「実は逮捕され勾留中」と伝えてくることが多いため、今回のように5日間まったく事情が不明というケースは珍しいかもしれません。
【事例】実務での対応例
私の経験では、このようなケースでは「解雇にこだわらず退職届を取得する」方が解決がスムーズです。
会社の担当者が警察署へ接見に行き、本人に退職届へ署名押印をしてもらう方法をとると、多くの場合は合意的に雇用関係を終了できます。
無断欠勤が続いた場合も、解雇という強硬手段だけでなく、柔軟な対応を検討することが望ましいと考えます。
まとめ
本件判決は、試用期間中であっても解雇には「合理性」と「社会的相当性」が必要であることを示しています。
一方で、欠勤理由を説明しない・虚偽の説明をする行為は、企業の信頼を損ない、解雇有効と判断されやすい傾向があります。
企業としては、就業規則の整備とあわせて、無断欠勤時の連絡体制や対応フローを準備しておくことが重要です。
根拠法令・参考情報
【事件情報】
事件名 :シービーアールイーCMソリューションズ事件
裁判所名:東京地方裁判所
判決日 :令和5年11月16日
事件番号:令和5年(ワ)第1414号
【参考条文】
労働契約法 第16条
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