2025年6月、「年金制度改正法(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)」が成立しました。
今回の改正は、働き方や性別にとらわれず多様なライフスタイルに対応し、老後の生活の安定を図ることを目的としています。ここでは、主な改正点と実務への影響を整理します。
1.短時間労働者の社会保険適用拡大
改正内容
- 企業規模要件の撤廃
これまで厚生年金は「従業員51人以上の企業」に勤務する短時間労働者のみが対象でした。
→ 2027年10月以降、段階的に拡大され、最終的には勤務先の規模にかかわらず週20時間以上で働けば加入可能になります。 - 賃金要件の撤廃(年収106万円の壁解消)
「年収106万円未満なら加入不要」という条件も廃止されます。最低賃金の上昇に合わせ、公布から3年以内に施行予定です。
事例
これまで週25時間勤務のパート社員Aさん(年収100万円)は、勤務先が小規模企業のため社会保険に加入できませんでした。改正後は勤務先の規模に関係なく加入でき、病気休業時の傷病手当金や将来の年金受給額の増加といった保障を受けられます。
2.個人事業所への適用拡大
2029年10月から、従業員が常時5人以上いる個人事業所について、業種にかかわらず社会保険の適用対象となります(現行は17業種のみ)。
ただし、施行時点ですでに開業している事業所は当面のあいだ対象外です
3.在職老齢年金の見直し
在職老齢年金は、60歳以上が働きながら受給する年金です。
- 支給停止の基準額は2024年度「50万円」→2025年度「51万円」。
- 2026年4月からは「62万円」へ大幅引上げ予定。
これにより「働いたら年金が減るからセーブする」といった行動が減り、高齢者の就業促進が期待されます
4.遺族年金制度の見直し
- 男女差の解消
子どものいない配偶者が受け取る遺族厚生年金について、2028年4月以降は男女差を撤廃。
→ 男性も女性と同じく「60歳未満なら原則5年の有期給付」と統一されます。 - 遺族基礎年金の改善
これまで「親が生計を同じくしている子ども」は対象外でしたが、2028年4月からは子ども本人にも支給されるようになります。
5.報酬月額上限の引上げ
厚生年金の標準報酬月額の上限が 65万円 → 75万円 に段階的に引き上げられます。
- 2027年:68万円
- 2028年:71万円
- 2029年:75万円
高額報酬者は将来の年金額も増加しますが、会社負担の保険料も増えるため企業側のコスト管理が重要です。
6.私的年金制度の充実
- iDeCo加入年齢の上限を70歳未満へ拡大
- 企業型DCのマッチング拠出制限を撤廃
- 企業年金の運用情報を公表(透明化)
これにより、従業員の老後資産形成をさらに支援する仕組みが整備されます。
まとめ
今回の年金制度改正は、
✅ パート・アルバイトの社会保険加入範囲の拡大
✅ 高齢者の就業促進
✅ 遺族年金の公平化
✅ 老後資産形成の後押し
など、従業員のライフステージに寄り添った大きな改正です。
企業は今後、
- 社会保険加入対象者の確認と説明
- 高齢者の就業ルール見直し
- 福利厚生(iDeCo・企業年金)の活用検討
といった対応が求められます。
📌 参考リンク
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