近年、多様な働き方の一環としてフレックスタイム制を導入する企業が増えています。特に清算期間を1か月を超えて設定するケースでは、休日労働や代休の取り扱いに注意が必要です。今回は「代休が清算期間内に消化できなかった場合の賃金精算」について解説します。
法定外休日労働の場合
フレックスタイム制(清算期間1か月超)において、時間外労働としてカウントされるのは以下の時間です。
- 1か月ごとに週平均50時間を超えた労働時間
- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた時間(上記①を除く)
法定外休日に労働が発生し、代休を清算期間内に消化できなかった場合は、時間外労働として割増賃金を支払う必要があります。この場合、代休を取得しなかったものとして精算します。
法定休日労働の場合
フレックスタイム制であっても、週1日の法定休日労働は清算期間の枠とは別に取り扱われます。したがって、代休が給与計算期間内に消化できなかった場合は、休日割増賃金を支払うことが原則です。こちらも、代休を取得しなかったものとして処理します。
事例:A社のケース
A社では、清算期間3か月のフレックスタイム制を導入しています。
9月のシフトで、従業員が法定休日に出勤し、代休を10月に取得予定でしたが、業務都合で代休を取れませんでした。
この場合、
- 法定休日労働 → 清算期間に関わらず休日労働として割増賃金を支払う
- 未取得の代休は「取得しなかった」として処理
という対応になります。結果的に、A社は休日割増分の賃金を追加で支給する必要があります。
根拠法令
- 労働基準法 第32条の3(フレックスタイム制)
- 労働基準法 第35条(休日)
- 労働基準法 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
フレックスタイム制を導入している企業は、代休の管理や休日労働の精算ルールを明確にしておくことが大切です。就業規則や運用ルールの整備を怠ると、思わぬ未払い残業代のリスクにつながります。
まとめ
- フレックスタイム制(清算期間1か月超)における代休未消化の取扱いは、休日の種類によって異なる。
- 法定外休日労働
代休が清算期間内に消化できなければ、時間外労働として割増賃金を支払う。 - 法定休日労働
フレックスタイム制の総労働時間とは別枠。代休が取れなければ、休日割増賃金を支払う必要がある。 - 実務では「代休を取得しなかったもの」として精算するのが原則。
- 運用ルールを就業規則で明確にし、未払い残業代リスクを防ぐことが重要。