~今後の改正論点を押さえておきましょう~
1. 労災保険制度の見直しが議論に
厚生労働省は、令和7年9月18日に「第120回 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」を開催し、労災保険制度の在り方について議論しました。
今回の主なテーマは次の3点です。
- 遺族(補償)等年金の支給要件や給付内容の見直し
- 消滅時効の在り方
- 遅発性疾病に係る給付基礎日額の扱い
特に 遺族(補償)等年金 の見直しは、企業にとっても労務管理上の留意点となる可能性があります。
2. 遺族(補償)等年金の論点
議論されている具体的な論点は以下のとおりです。
- 夫と妻の支給要件の差を解消するかどうか
現行制度では、妻に比べて夫の受給要件が厳しい面があります。これを平等化するかどうかが課題です。 - 給付期間の在り方
遺族年金の「長期給付」を維持すべきかどうか。 - 妻にのみ認められている特別加算の取扱い
受給権者が1人の場合に妻のみに加算がある制度をどう見直すか。
3. 実務で意識すべきポイント
現時点では制度改正が決定したわけではありませんが、企業としては以下の点を意識しておく必要があります。
- 労災事故発生時の補償説明に影響
遺族補償の説明内容が改正によって変わる可能性があります。 - 時効管理の重要性
労災保険給付には消滅時効があり、請求が遅れると権利が失効します。企業側も被災労働者や遺族への周知に留意が必要です。 - 遅発性疾病への対応
石綿関連疾患など、発症までに時間を要する疾病についても議論されており、長期的な労務リスク管理に直結します。
4. 事例で考える
事例①:配偶者の要件差
ある労働者が業務災害で亡くなった場合、遺族年金の受給対象となる配偶者が妻であれば要件を満たすが、夫の場合は現行制度では受給できないケースがあります。
👉 今後、この差が是正されると「夫も受給可能」となる可能性があります。
事例②:請求遅れによる時効消滅
遺族が制度を十分に理解しておらず、請求が遅れてしまった場合、消滅時効により補償を受けられなくなることがあります。
👉 労災発生時には、企業として「補償請求は時効がある」旨を早めに案内することが大切です。
まとめ
労災保険制度の見直しは、企業の安全衛生管理や労災対応に直結する重要なテーマです。
今回の議論はまだ途中段階ですが、将来的な改正に備え、最新の情報を把握しておくことが求められます。
👉 詳細は厚生労働省の公式資料をご覧ください。
第120回 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会/資料