雇用保険において自己都合退職であっても、一定の事情があれば「特定理由離職者」として扱われ、失業給付の待機期間短縮や給付制限なしで受給できる場合があります。
しかし、単身者が業務命令による異動で通勤が困難になったため退職した場合は、この「特定理由資格者」に該当するのでしょうか。
特定理由資格者となる可能性がある通勤困難の事例
厚生労働省の取扱いによると、次のような理由で通勤が困難となった場合は、特定理由離職者に該当する可能性があります。
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用、または親族などへの保育依頼
- 事業所の通勤困難な地への移転
- 自己の意思に反して住所や居所の移転を余儀なくされた場合(例:強制立退き、天災による移転)
- 鉄道・バス等の運行廃止や運行時間の変更
- 事業主命令による転勤・出向に伴う「別居回避」
- 配偶者の転勤・出向、または再就職に伴う「別居回避」
単身者の異動による退職は該当する?
今回のケースは「単身者が業務命令で異動 → 通勤困難となり退職」というものです。
- ④の自己の意思に反する住所移転に見えるものの、これは「強制退去」「災害での移転」といったケースが対象であり、会社命令の異動は該当しないとされています。
- ⑥の別居回避は、配偶者や同居の親族と生活を共にしている場合に認められるものであり、単身者には適用されません。
したがって、単身者が業務命令による異動で通勤が困難となった場合は、特定理由資格者には該当しないことになります。
実務での事例
事例①:単身者の異動
Aさんは大阪本社勤務から東京支社に異動を命じられました。東京での住居は用意されましたが、家庭の事情により大阪から通勤を継続することは不可能でした。やむなく退職しましたが、単身者であるため特定理由資格者には該当せず、通常の自己都合退職扱いとなりました。
事例②:配偶者がいる場合
Bさんは既婚で、妻と小学生の子どもと同居していました。会社から遠方への転勤を命じられ、単身赴任か退職かを選ばざるを得ませんでした。家族と別居を避けるため退職した場合、⑥の「別居回避」に該当し、特定理由資格者として認められる可能性が高いとされています。
まとめ
- 単身者の異動による通勤困難は、特定理由資格者には原則該当しない
- 配偶者や扶養親族と同居している場合は「別居回避」が認められる可能性がある
- 実際の判断はハローワークが行うため、退職前に必ず確認することが重要
根拠法令・参考情報
- 雇用保険法 第13条(基本手当の受給資格)
- 雇用保険法施行規則 第19条の2
- 厚生労働省『雇用保険に関する業務取扱要領「一般被保険者の求職者給付 第4」』50305-2
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