労務管理

安全衛生の遵守義務は就業規則に定める必要があるのか?

法的な位置づけ

労働基準法第89条では、就業規則に必ず記載しなければならない「必要記載事項」が定められています。
その中の一つに 「安全及び衛生に関する定め」 が含まれています。

この「安全及び衛生に関する定め」は 相対的必要記載事項 です。
つまり、会社が安全衛生に関するルールを定める場合には、必ず就業規則に記載しなければなりません。

「安全及び衛生に関する定め」の具体例

以下の事項が就業規則に記載対象となります。

  • 法令で定められた事項
    例:労働安全衛生法に基づく健康診断の実施、安全衛生教育の実施、作業環境測定 など
  • 法令にないが事業場に必要な事項
    例:社内でのヘルメット着用義務、衛生管理委員会の開催ルール、感染症対策 など

実務でのポイント

  1. 安全衛生委員会の意見を反映
    → 委員会での決定事項を就業規則や関連規程に落とし込み、明文化する。
  2. 従業員に周知することが必須
    → 就業規則に記載することで、従業員に義務を明確にし、ルール違反時の懲戒規定とも整合させる。
  3. 時代に応じた見直し
    → 近年ではメンタルヘルス対策や感染症対策も「安全衛生」の一部として就業規則に盛り込まれる傾向があります。

事例

事例①:就業規則に未記載でトラブル

製造業A社では、工場内でヘルメット着用を指示していましたが、就業規則に定めがなく、違反者を懲戒処分したところ「規則にない」と労働者から反発。結果として処分が無効とされ、会社は対応を見直すことになりました。

事例②:感染症対策を規程化してスムーズに運用

医療機関B社では、就業規則に「感染症対策の遵守義務」を記載。新型コロナ流行時にマスク着用や出勤制限を行った際、従業員もルールを理解しており、大きな混乱なく対応できました。

まとめ

  • 「安全及び衛生に関する定め」は 相対的必要記載事項
  • 定めを設ける場合は、必ず就業規則に記載しなければならない。
  • 実務上は、処分やルール徹底の根拠として必須 であり、労務トラブルを防ぐ役割も果たす。

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