2025/09/09 法務・労務Q&A
会社で社用車を使用していると、避けられないリスクのひとつが「従業員による自損事故」です。
「修理費用は従業員に全額負担させたい」と考える会社も少なくありませんが、法的にはどこまで認められるのでしょうか。
法的な考え方
結論からいえば、修理費用を全額従業員に負担させることは困難です。
根拠
- 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
業務命令に違反するような行為や注意義務違反があれば、債務不履行責任を問える場合があります。 - 民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意や過失により損害を与えた場合には、不法行為責任を問うことが可能です。
しかし、企業は事業活動から利益を得ている以上、その活動に伴う一定の損失を負担すべきという「報償責任」の考え方が重視されます。そのため、信義則上、損害の全額を従業員に請求するのは難しいとされています。
判例の参考事例
ある従業員が居眠りにより機械を損傷させた事案では、裁判所は「従業員に重過失がある」としながらも、損害額の25%のみを従業員に負担させる判断をしました。
→ このように、従業員の責任が大きい場合でも、損害の一部に限られるケースが多いのです。
実務上の対応ポイント
- 就業規則に明記
事故や損害発生時の費用負担ルールを定めておきましょう。 - 過失の程度を考慮
故意・重過失の場合にのみ一部負担を求める、といったルール設計が適切です。 - 保険の活用
社用車には任意保険・車両保険をかけ、会社負担を最小限に抑えることが現実的です。 - 従業員教育
事故防止研修や安全運転指導を行うことで、再発防止につなげることができます。
まとめ
- 原則として修理費用の全額負担を従業員に請求するのは難しい
- 過失の程度によっては一部負担を認める判例がある
- ルール整備と保険加入が会社にとってのリスクヘッジになる
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