労務管理

毎月給与を現金支給している場合において、行方不明になった従業員の最後の給与を手渡しできない場合の対応

会社が給与を現金で支給している場合、従業員が行方不明となり、最後の給与を直接渡せないケースがあります。このような場合、どのような対応を取るべきでしょうか。

1. 預金口座が分かっている場合

従業員の預金口座が会社に把握されている場合には、その口座に振込を行うことで支払が可能です。
給与の「現金支給」という原則は、労働基準法第24条において「通貨で直接労働者に支払わなければならない」と規定されていますが、労働者の同意があれば銀行振込による支給も認められています

2. 預金口座が分からない場合

一方、従業員の預金口座が分からず振込できない場合は、会社が未払い賃金を保管する義務があります。
この場合、会社は未払給与を適切に管理し、労働基準法第115条に定められた「時効(原則3年)」が完成するまで保管を続ける必要があります。

なお、会社が勝手に支給を免れることはできず、労働者本人が現れるか、相続人等からの請求があるまでは会社にて責任を持って管理することになります。

3. 実務での注意点

  • 保管にあたっては未払い賃金の金額、対象者、発生年月日などを明確に記録することが望ましいです。
  • 相続人や代理人からの問い合わせがあった場合には、相手の権限(相続関係を証明する書類等)を確認してから支払うことが必要です。

事例

ある飲食業の会社では、毎月給与を現金手渡しで支給していました。ところが、ある従業員が突然出勤しなくなり、連絡も取れない状態になりました。会社は給与を支給できず困っていましたが、本人の銀行口座が分かっていたため、後日振込で支給することができました。

一方、別のケースでは口座情報が不明であったため、会社は未払い賃金を金庫で保管し、賃金台帳に「未払賃金」と明記したうえで管理を続けました。その後、相続人から連絡があり、相続を証明する戸籍謄本等を確認してから、未払給与を支払うこととなりました。

まとめ

行方不明の従業員への最後の給与は、

  • 預金口座が分かれば振込で支給
  • 預金口座が不明であれば会社で保管(時効完成まで)

という対応が基本となります。

📌 根拠法令・参考情報

  • 労働基準法 第24条(賃金の支払)
  • 労働基準法 第115条(時効)

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