労務管理

身元保証書に極度額の定めがありませんが、身元保証契約は有効ですか?

ひらおか社会保険労務士事務所です。
今回は「身元保証契約」に関する重要なポイントを解説します。企業が従業員を採用するときに利用することのある「身元保証書」ですが、民法改正によって取扱いが大きく変わっています。実務で誤解が多い部分ですので、具体例も交えてご紹介します。

1. 身元保証契約とは?

身元保証契約とは、従業員が勤務する上で会社に損害を与えた場合に、保証人がその責任を負うとする契約です。
採用時に「身元保証書」として提出されることが一般的です。

2. 極度額の定めが必要になった背景

2020年4月1日施行の改正民法により、個人が保証人となる契約(個人根保証契約)には「極度額(保証の上限額)」を定めることが義務づけられました。
これにより、2020年4月1日以降に締結された身元保証契約に極度額の記載がなければ無効となります。
(民法465条の2)

3. 2020年3月31日以前の契約は?

一方で、2020年3月31日以前に締結された契約については、極度額がなくても有効とされる可能性があります。
ただし、保証期間は最長5年とされているため、古い契約は既に効力を失っているケースも少なくありません。更新の際は必ず「極度額」を定める必要があります。

4. 実務での注意点

  • 採用時に提出を求める場合は、必ず極度額を明記すること
  • 保証期間は原則3年(最長5年)であるため、自動更新の有無や更新方法を明確にしておくこと
  • 古い身元保証書をそのまま使い続けると、無効とされるリスクがある

5. 事例で確認

事例①:2021年4月入社の従業員
採用時に極度額を定めずに「身元保証書」を取得した → 無効。保証人に請求できない。

事例②:2019年4月入社の従業員
当時極度額を定めずに契約 → 当初は有効。しかし、保証期間が5年を経過する2024年4月以降は効力を失う。更新時には極度額を必ず設定する必要がある。

まとめ

  • 2020年4月以降は、極度額のない身元保証契約は無効
  • 古い契約でも、期間満了により効力を失う可能性が高い。
  • 実務では「極度額の定め」と「保証期間の確認」が必須。

採用時や人事労務管理においては、古い書式を使い回していないか、今一度チェックしてみてください。

✅ 採用書式の見直しや、身元保証契約の実務対応に不安がある場合はお気軽にご相談ください。

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