はじめに
従業員を雇用する事業主にとって、雇用保険・社会保険の適正な加入は法令遵守の基本です。
「パートさんは対象?」「70歳の従業員は?」「学生アルバイトは?」など、実務では迷う場面も多いでしょう。
今回は、実際のチェック項目をもとに、雇用保険・社会保険の加入要件を整理していきます。
1.雇用保険の加入要件
対象となる企業
雇用保険は、従業員を1人でも雇用している事業主であれば、業種・規模を問わず原則として適用されます。
対象となる従業員
次の2つの条件を満たす方が対象です。
1️⃣ 雇用期間が31日以上見込まれる(更新規定あり)
2️⃣ 週の所定労働時間が20時間以上
パート・アルバイト・契約社員など、雇用形態は問いません。
実務上の注意点
- 「パートだから対象外」と誤解して未加入となるケースが多いです。
- 65歳以上の新規雇用者も、原則として加入対象です。
対象外となるケース
以下の場合は、原則として被保険者になりません。
| 区分 | 対象外となる場合 | 対象となる場合 |
|---|---|---|
| 顧問・業務委託者 | 出退勤が自由など労働者性がない場合 | 指揮監督下で働く場合 |
| 昼間学生 | 原則対象外 | 卒業見込み証明書を提出し、卒業後も勤務予定なら対象 |
| 家事使用人 | 主として家事に従事する場合 | ― |
事例:学生アルバイトの誤認加入漏れ
大学生のアルバイトが卒業見込み証明書を提出し、卒業後も勤務を継続する予定であったにもかかわらず、
「学生だから対象外」として加入手続きをしなかったケース。
→ 卒業後も継続勤務する場合は、雇用保険加入が必要です。
2.社会保険(厚生年金・健康保険)の加入要件
対象となる企業
- 株式会社・合同会社などの法人事業所は代表者のみでも対象
- 個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員がいる場合(一部業種除く)
対象となる従業員
基本的には70歳未満の従業員で、報酬を受けている方は加入が必要です。
試用期間中であっても報酬を支払う場合は対象になります。
パート・アルバイトの場合
次の①〜④のすべてを満たす方は、社会保険に加入が必要です(被保険者が51人以上の企業の場合)。
① 週の所定労働時間が20時間以上
② 2か月を超える雇用見込み
③ 月額報酬が8.8万円以上
④ 学生でないこと
対象外となる主なケース
| 区分 | 対象外となる場合 | 対象となる場合 |
|---|---|---|
| 日々雇い入れ | 1か月超えて継続雇用された場合 | 当初から対象 |
| 2か月以内の短期雇用 | 延長・継続が見込まれる場合 | 当初から対象 |
| 季節的業務(4か月以内) | 4か月超えて継続予定なら | 当初から対象 |
事例:パート職員の厚生年金未加入問題
週25時間勤務・月10万円の報酬を受けていたにもかかわらず、
「週30時間未満だから対象外」と誤解し加入していなかったケース。
→ 所定労働時間が一般社員の4分の3未満でも、
企業規模と要件を満たせば社会保険加入が必要です。
3.健康保険との関係
健康保険と厚生年金は基本的にセット加入です。
ただし、75歳以上の方は後期高齢者医療制度の対象となり、健康保険の加入対象外となります。
4.まとめ:加入漏れを防ぐために
- 「パート」「学生」「高齢者」でも要件に該当すれば加入対象です。
- 週20時間、月8.8万円を超える勤務は必ずチェック。
- 迷ったときはハローワークまたは年金事務所へ確認を。
事務所からのワンポイントアドバイス
✅ 加入要件を「なんとなく」で判断せず、労働契約書・勤怠実績・給与支給額の3点から総合的に判断しましょう。
✅ 加入漏れが判明すると、遡及保険料の徴収・罰則につながる場合もあります。
✅ 年に一度は、顧問社労士と一緒に「加入状況の棚卸し」を行うのがおすすめです。
ひらおか社会保険労務士事務所では、
企業の保険加入状況のチェックから、加入手続きの代行、職員説明会まで一括サポートしています。
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