労務管理

【実務で迷いがち】接客態度の指導はパワハラにあたる?

店舗やサービス業では、従業員の接客態度が顧客満足に直結します。
そのため、顧客からクレームがあった場合に上司が指導を行うことは避けられません。

しかし近年、「注意したらパワハラと言われた」「厳しく指導できない」といった声も多く聞かれます。
では、接客態度の基本から指導することは、パワハラになるのでしょうか?

■ 1.結論:適切な方法であればパワハラには該当しない

接客時の対応が悪く顧客からクレームがあった従業員に対して、
接客態度の基本から指導すること自体は、通常パワハラには該当しません。

なぜなら、接客態度の改善は業務上必要な行為であり、
指導は「業務上の適正な範囲」に含まれるからです。

■ 2.パワハラの法的定義を確認

労働施策総合推進法第30条の2では、パワーハラスメントを次のように定義しています。

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
労働者の就業環境を害するもの。

つまり、「業務上必要かつ相当な範囲」を超えた指導がパワハラにあたります。
逆に言えば、その範囲内での指導は正当な教育・指導行為です。

■ 3.注意すべき「指導のやり方」

問題になるのは「内容」ではなく「方法」です。
次のような対応は、業務指導の範囲を超えるおそれがあります。

NG行為理由
人格や性格を否定する発言「お前は社会人失格だ」などは指導ではなく侮辱に該当
他の従業員の前で叱責公開の場で恥をかかせると、精神的苦痛につながる
長時間・繰り返しの叱責必要以上の反復は、威圧・強要と評価されるおそれ
記録や根拠を示さず感情的に叱る客観性がなく、ハラスメントの主張を招きやすい

■ 4.【事例紹介】接客業B社のケース

B社では、アルバイト従業員が顧客対応で失礼な言動をしたとして、
店長が勤務後に1時間にわたり立たせて注意を行いました。
本人は涙を流し、「怒鳴られた」「人格を否定された」と訴えました。

このケースでは、指導の目的は正当でも、方法が不適切だったと判断され、
社内でパワハラ相談が発生しました。

B社は再発防止策として、

  • 指導は「1対1・短時間・冷静に行う」
  • 感情的な言葉は使わない
  • 指導内容を記録に残す

というルールを策定。以降、トラブルは発生していません。


■ 5.実務アドバイス:現場での工夫

  • 「行動」を指摘し、「人格」は否定しない
    → 「お客様への声かけが小さかった」など具体的に。
  • 目的を明確に伝える
    → 「改善してほしい理由」を示すことで納得感が高まります。
  • 短時間・冷静・1対1
    → 感情的にならず、落ち着いた環境で実施を。
  • 記録に残す
    → トラブル発生時の客観的証拠となります。

■ まとめ

接客態度の指導は、適切に行えばパワハラではありません。
しかし、伝え方次第で「指導」が「ハラスメント」に変わることがあります。
上司・管理職は、内容だけでなく方法と環境にも配慮することが重要です。


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