「残業は事前許可制にしているから、無申告で残業した分は払わなくて良いですよね?」
このようなご相談を企業から多くいただきます。
結論として、許可されていない残業であっても、労働時間と認められる場合には割増賃金の支払い義務が生じます。
本記事では、法律・判例・実務上の注意点をわかりやすく解説します。
✅ 結論:許可制であっても「労働時間」と認められるケースはある
| ケース | 労働時間に該当するか |
|---|---|
| 使用者が命じた、黙認した | ✅ 支払い義務あり |
| 業務量的に残業せざるを得ない | ✅ 支払い義務あり |
| 明確に禁止され、徹底されていた | ❌ 労働時間と認められない場合あり |
ポイントは、「許可の有無」ではなく「使用者の指揮命令下にあったか」 です。
⚖ 判例での考え方:三菱重工業長崎造船所事件(最判 平12)
最高裁は、次のように判断しています。
労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいう。
(労働契約や就業規則の定めによらず、客観的に判断)
🧭 実務で起こりやすいケースと判断ポイント
📌 ケース①:上司が黙認していた残業
〈状況〉
社員が報告書の作成のため居残り。上司は気付いていたが、特に注意せず。
〈判断〉
この場合、黙認=事実上の指示と評価されるため、労働時間と認定 → 割増賃金が必要
📌 ケース②:業務量が過大で、残業せざるを得なかった
〈状況〉
月末処理でどうしても終わらない量の仕事を与え、許可は出していなかった。
〈判断〉
業務の状況を把握していた使用者の責任が問われ、労働時間と認定される可能性大
🚫 ケース③:会社が厳格に残業禁止を指示していた
〈状況〉
「19時完全退社」を社内周知し、違反には指導もしていた。
〈判断〉
このように徹底していた場合は、例外的に労働時間と認められないことも。
🛠 企業が取るべき対応策(未然防止が肝心)
| 対応策 | 実務ポイント |
|---|---|
| 📝 就業規則整備 | 「残業は事前申請が必要」と明文化 |
| 🗣 上司教育 | 黙認を防ぎ、注意喚起・声かけ徹底 |
| 🔍 業務量の管理 | 終業時刻に終わる業務設計を |
| 📊 勤怠システム活用 | 打刻後残業の把握・アラート機能 |
※「許可制」だけでは防げず、実態の管理と指導体制が重要 です。
📚 厚労省ガイドラインでも明記
労働時間の判断は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかによる。
(就業規則の定めに左右されない)
出典:『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』
🗂 まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ❗ 許可されていない残業でも | 労働時間と認められることがある |
| 💰 賃金不払いリスク | 未払い残業 → 遡及請求(最大3年) |
| ⚠ 防止策が重要 | 周知・管理・業務見直し |
💬 無許可残業・勤怠管理でお困りですか?
「申請なし残業をどう扱うか?」
「36協定やガイドラインに沿って整備したい」
そんな企業のご相談が増えています。