~「採用選考自主点検資料」から学ぶ、違反しない採用の進め方~
採用活動は企業にとって将来を左右する重要なプロセスですが、同時に法律違反や人権侵害のリスクも潜んでいます。厚生労働省は、令和7年度版として『採用選考自主点検資料~公正な採用選考を行うために~』を公表し、企業が自ら点検できるガイドラインを提示しています。
本記事では、その内容をもとに実務担当者が押さえるべきポイントを、事例とともに解説します。
🎯 公正な採用選考とは?
公正採用とは、本人の能力・適性にのみ基づいて選考すること。
以下のような事項で判断してはならないとされています。
| 不適切な判断基準 | 理由 |
|---|---|
| 本籍地・出身地 | 職務と無関係 |
| 家族構成・職業 | 個人の責任ではない |
| 宗教・思想・支持政党 | 自由と人権の侵害 |
| 同和・民族に関する事項 | 差別につながる |
📝 採用プロセスごとの「自主点検ポイント」
| 採用ステップ | チェックすべきポイント |
|---|---|
| 募集 | 募集条件に不合理な制限がないか |
| 応募書類 | 本籍地・家族欄などを求めていないか |
| 筆記・適性検査 | 職務に関係する内容か |
| 面接 | 不適切な質問をしていないか |
| 内定・通知 | 不採用者への対応は誠実か |
❌ 聞いてはいけない面接質問(例)
| NG質問 | 問題点 |
|---|---|
| 「ご両親の職業は?」 | 家柄・出身を判断材料にする恐れ |
| 「部落(地域)出身ですか?」 | 同和差別につながる |
| 「宗教・信仰はありますか?」 | 信条・自由の侵害 |
| 「結婚・出産の予定は?」 | 男女雇用機会均等法違反 |
📚【事例】不適切質問でトラブルになったケース
製造業B社(従業員80名)
面接で「将来結婚したら仕事は続けますか?」と女性応募者に質問。
➤ 応募者がSNSで公表し炎上、労働局から指導。
教訓:
「何気なく聞いた質問」が企業イメージと採用力に大きなダメージを与える。
🛡 採用リスクを防ぐための実務対策
| 対策 | 実務アクション |
|---|---|
| 面接マニュアル作成 | OK・NG質問を明記 |
| 面接官研修 | 人権・アンコンシャスバイアス |
| 応募書類の見直し | 本籍・家族欄は入れない |
| 公正採用選考人権啓発推進員の選任 | 社内責任者として配置 |
🏢 企業内で活用できるチェックリスト(抜粋)
✅ 応募書類に本籍欄を求めていないか
✅ 家族の職業・収入を聞いていないか
✅ 宗教・思想に関する質問をしていないか
✅ 面接記録は客観評価(点数)で行っているか
🔍 採用力を高めるために ―「公正さ」は武器になる
優秀な人材ほど、企業の採用姿勢を見ている
SNSや口コミが広がる時代に、採用現場の対応は企業ブランドを左右します。
「公正な採用」が実現できれば、応募者からの信頼だけでなく、内定辞退の防止にもつながります。
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