~非正規社員の正社員登用を支援する制度~
「長く働いてくれているパートさんを正社員にしたいけれど、コスト面が不安…」
そんな中小企業の経営者の方におすすめなのが、キャリアアップ助成金(正社員化コース)です。
本記事では、社労士の視点から制度のポイントと実務での注意点をわかりやすく解説します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の概要
この制度は、有期・無期・派遣などの非正規従業員を正社員に登用した場合に、
企業が受け取ることができる国の助成金です。
厚生労働省が実施しており、目的は「処遇改善」と「安定雇用の促進」です。
対象となる転換パターン
| 転換区分 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 有期 → 正社員 | 40万円 | 30万円 |
| 無期 → 正社員 | 20万円 | 15万円 |
| 重点支援対象者(例:勤続3年以上など) | 各額の2倍 | 各額の2倍 |
対象となる労働者の条件
助成金を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
- 正社員とは異なる雇用区分で 6か月以上勤務 している
- 採用時に「正社員登用を約束」されていない
- 正社員化の前日から3年以内に同じ企業で正社員だったことがない
「正社員」と認められるための条件
単に無期雇用に変えただけでは助成対象になりません。
正社員としての処遇(昇給・賞与・退職金など)が明確に適用されていることが必要です。
- 昇給制度がある
- 賞与または退職金制度がある(どちらか一方でも可)
- 就業規則に制度内容を明記している
実務上の注意点(よくある落とし穴)
① キャリアアップ計画書は「転換前」に提出!
申請で最も多い不支給理由が「提出時期の誤り」です。
転換後の提出では対象外となるため、必ず事前に労働局へ提出しましょう。
② 賃金アップ率は「3%以上」必要
賃金比較は「転換前6か月」と「転換後6か月」で行われます。
ただし、通勤手当・残業代・賞与は除外されるため、
基本給ベースで3%アップさせることがポイントです。
③ シフト制の正社員は週所定労働時間を明記
「シフトで週40時間になる見込み」ではなく、
就業規則に週36~40時間と定めておくことで支給対象になりやすくなります。
【実例紹介】飲食業A社の正社員登用ケース
大阪府の飲食店A社では、アルバイト歴4年のスタッフ2名を正社員に登用しました。
- 転換時期:2025年4月
- 対応した内容:基本給を3%アップ、賞与制度を新設
- 事前に行った手続き:キャリアアップ計画書の提出・就業規則改訂
結果、2名分で 合計80万円(40万円×2人) の支給が決定。
さらに、就業規則に転換制度を新設したため、+20万円の加算措置も受けることができました。
「制度を整備したことで、他のパートさんのモチベーションも上がった」との声も。
助成金が“きっかけ”となり、職場全体の安定につながった好事例です。
派遣社員の正社員化も対象
派遣社員が派遣先企業に直接雇用され、正社員となった場合も支給対象です。
ただし、派遣元で正社員化して引き続き派遣する場合は対象外です。
加算措置も活用を!
- 正社員転換制度を新設:+20万円
- 多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定など)を新設:+40万円
※整備後、最初に転換した1人目が対象です。複数人でも加算は1回限り。
申請の流れ
- キャリアアップ計画書の提出(転換前)
- 正社員転換の実施・6か月間勤務
- 賃金支給日の翌日から2か月以内に申請
必要書類は「労働契約書」「出勤簿」「賃金台帳」「就業規則」など。
GビズIDを取得すれば、電子申請も可能です。
社労士からのアドバイス
- 計画書提出は「転換日の30日前」が理想
- 昇給・賞与・退職金制度は明文化が必須
- 労働条件通知書・賃金台帳は6か月分保管
- 離職・契約終了が多い職場では不支給リスクあり
まとめ
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、
「長く働く人を大切にする企業」ほど活用できる助成金です。
制度をうまく活用すれば、
・人材の定着率アップ
・社内のモチベーション向上
・人件費負担の軽減
という3つの効果が得られます。
💡ポイント
✅ 転換前の計画提出が必須
✅ 基本給ベースで3%以上アップ
✅ 賞与・退職金・昇給のいずれかを整備
✅ 就業規則に転換制度を明記
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キャリアアップ助成金の申請をお考えの方は、専門社労士にご相談ください。