~副業が広がる今、企業が押さえておくべきポイント~
1.副業中にケガをした従業員から「有給休暇申請」…拒否できる?
近年、副業を行う従業員が増えています。
そんな中で、「副業中にケガをしたため休みたい」という申請を受けることがあります。
このとき、企業としては「それは副業でのケガだから、有給は使えないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、原則として有給休暇の申請を拒否することはできません。
2.有給休暇は「理由を問わず」取得できる
労働基準法第39条では、有給休暇は労働者の請求する時季に与えなければならないと定められています。
つまり、休む理由が「副業中のケガ」であっても、法律上は有給休暇を取得できます。
有給休暇の申請を企業が拒否できるのは、次のような「時季変更権」が認められる場合のみです。
3.企業が有給休暇を拒否できるのはどんなとき?
✅ 拒否できるのは以下の2つの場合だけ
1️⃣ 申請が当日以降(急な申請)の場合
→ 急な欠勤で業務に支障が出るときなど。
2️⃣ 業務の調整や代替要員の確保ができず、事業運営に著しい支障がある場合
→ その従業員がいないと業務が回らないとき。
つまり、「副業中のケガだから」という理由だけでは、有給休暇を拒否することはできません。
ただし、業務上やむを得ない場合には、時季変更(別の日に変更をお願いする)ことが可能です。
4.拒否した場合のリスク
有給休暇の取得について、正当な理由がなく拒否した場合、
労働基準法第39条違反となり、以下の罰則が定められています。
🔹 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
従業員から労基署へ申告があった場合、指導・是正勧告の対象となるおそれがあります。
したがって、安易な拒否は避け、法に基づく対応を取ることが重要です。
5.【実務事例】副業中のケガと有給申請対応
事例:製造業B社の場合
従業員が休日に副業先で転倒し、骨折。翌日から3日間の療養が必要になったため、有給休暇を申請しました。B社では「副業中のケガなら自己責任では?」と一時は拒否を検討しましたが、
社労士の助言により法的に拒否できないことを確認。
ただし、当日申請だったため、翌日以降の出勤予定日について時季変更を依頼し、結果的に調整のうえ有給を認めました。この対応により、他の従業員にも「ルールに基づく公正な運用」という安心感を与える結果となりました。
6.副業と労務管理の今後のポイント
副業を行う従業員が増えるなか、企業としては副業に関するルールを明確に定めることが重要です。
とくに次のような点を就業規則や社内通知で整備しておくと安心です。
📘 副業ルール整備のチェックポイント
- 副業の届出・承認制度を設ける
- 副業中のケガ・事故について、報告義務を定める
- 有給休暇取得時の連絡ルール(事前申請・当日連絡方法など)
- 本業に支障を及ぼす場合の禁止規定
7.まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 副業中のケガであっても有給休暇の申請は拒否できない |
| 例外 | 当日申請などで業務に支障がある場合のみ「時季変更」が可能 |
| 注意点 | 拒否に正当な理由がなければ罰則の対象に |
| 実務対応 | 副業規定や申請ルールをあらかじめ整備する |
💬 まとめのひとこと
副業をする従業員が増える今、企業は「副業を前提とした労務管理」にシフトする必要があります。
今回のような有給休暇の取り扱いも、あらかじめルールを明確にしておくことでトラブルを防止できます。
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