労務管理

【実務解説】地域手当は割増賃金の計算基礎に含まれる?

~高物価地域への手当と残業代の取り扱い~

✅ はじめに

大都市圏など物価が高い地域で働く従業員に対し、企業が「地域手当」「物価手当」を支給するケースがあります。
では、この地域手当は 残業代(割増賃金)の計算基礎に含めるべきでしょうか?

結論として、地域手当は割増賃金の算定基礎に含める必要がある と考えられます。
その理由と、企業が誤りやすいポイントを詳しく解説します。

✅ 法的根拠:除外できる手当は“限定列挙”

労働基準法第37条および施行規則第21条により、
割増賃金の算定から除外できる手当 は次の7種類に限定されています。

割増賃金の計算から除外できる手当
家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

ポイント:上記に当てはまらない手当(例:役職手当・職務手当・地域手当など)は、原則として基本給に含めて割増賃金の基礎とします。

➡ 地域手当は「生活補助・地域差補填」の性質であり、いずれの除外項目にも該当しないため、算定基礎に含める必要があります。

🏢 事例:地域手当を除外していた企業の指摘例

《事例:首都圏に支店を持つ製造業A社》

  • 本社は地方、東京支店の社員に月20,000円の地域手当を支給
  • 残業代を 「基本給のみ」 で計算していた
  • 労基署の調査で、「地域手当を算入していないため未払い残業の可能性がある」と指摘

▶ 結果:2年遡って追加支払いを実施

🧮 実務ポイント:残業単価はどう変わる?

<例:社員の給与構成>

項目金額
基本給200,000円
地域手当20,000円
職務手当30,000円

本来の割増賃金の計算基礎は 250,000円(基本給+地域手当+職務手当)
これを 200,000円だけで算出していると、残業代が不足 します。

🛡️ 企業が取るべき対応

チェック項目対応ポイント
就業規則「手当の性質」「残業単価の算定方法」を明記
給与計算給与ソフトの算定基礎設定に漏れがないか確認
未払いリスク2年遡及(最大3年)で請求される可能性

✍ まとめ

内容結論
地域手当の扱い原則として割増賃金の計算に含める
除外できる手当家族・通勤・住宅など7項目のみ
実務上の注意就業規則・給与ソフトの設定確認が必須

📌 労務担当者へのアドバイス

「地域手当=生活補助」と軽視されがちですが、
算定基礎への不算入は未払い残業代の典型的な指摘ポイント です。
制度導入時・給与改定時には必ず見直しましょう。


ご希望があれば、
✅ 給与規程への記載例
✅ 地域手当を含めた残業単価のシミュレーション表
✅ 未払い残業への社内説明文
なども作成できます。お気軽にお申し付けください。

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