労務管理

【実務解説】変形労働時間制のリスクと対応策|導入前に知っておきたい落とし穴

こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。

「繁忙期と閑散期の差が大きい業種だから、変形労働時間制を導入したい」とご相談をいただくことがよくあります。
しかし、制度設計や運用を誤ると制度そのものが無効となり、多額の未払い残業代が発生するリスクがあります。

今回は、変形労働時間制のリスクと実務対応のポイントを事例とともに解説します。

1. 変形労働時間制の基本

変形労働時間制は、一定期間(1か月や1年)を平均して法定労働時間内に収める仕組みです。

  • 1か月単位の変形労働時間制(就業規則+労使協定が必要)
  • 1年単位の変形労働時間制(労使協定を締結し、行政官庁に届出)
  • フレックスタイム制(清算期間内で調整)

一見便利ですが、就業規則・労使協定の不備、シフト表の管理不足などが命取りになります。

2. 実務で起こりやすいリスク

資料では、特に以下のようなリスクが指摘されています。

要件不備による制度無効
協定書や就業規則に「対象期間」「対象労働者」「具体的な労働日・労働時間の配置」が記載されていないと制度が無効に。

未払残業代の発生
「月平均では法定内」と思っていても、日ごとの労働時間が上限を超えると残業扱いになり、未払い請求を受ける可能性あり。

労務トラブルの増加
従業員が制度を理解していないと「残業が増えた」「不公平だ」と不満につながり、労基署への申告リスクも。

3. 事例で学ぶリスクと対応

事例①:制度無効で残業代請求

建設業のA社は1年単位の変形労働時間制を導入していましたが、協定書に「労働時間の具体的な配置」が記載されていませんでした。
その結果、制度は無効とされ、過去2年分の残業代請求(総額数百万円)を受けました。

👉 対応策:協定書・就業規則に必須項目を漏れなく記載し、定期的に社労士とチェック。

事例②:シフト表の不備で是正勧告

小売業のB社では1か月単位の変形労働時間制を採用していました。
しかし、作成したシフト表に一部欠落があり、従業員に事前周知していなかったため、制度が適用されず。
結果、労基署から是正勧告を受け、未払残業代を支払う羽目になりました。

👉 対応策:シフト表は必ず「事前に」「全員に」周知。訂正時は記録を残す。

事例③:従業員の理解不足から不満噴出

サービス業のC社では、閑散期の労働時間を短縮する一方、繁忙期に長時間勤務を組み込む制度を導入。
ところが、従業員への説明が不十分で「一方的に残業が増えた」との不満が出て、複数名が労基署に相談。

👉 対応策:導入前の説明会・同意取得を徹底し、労働者の理解を得ながら運用する。

4. 実務担当者のチェックリスト

  • 協定書・就業規則に必要事項が記載されているか?
  • シフト表を作成し、事前に全員へ周知しているか?
  • 実労働時間を毎月集計し、平均で法定内に収まっているか?
  • 従業員説明・同意の記録を残しているか?

まとめ

変形労働時間制は、繁閑差の大きい企業にとって有効な制度ですが、運用を誤れば「残業代請求」「制度無効」の大きなリスクがあります。

導入・運用の際には、必ず専門家に確認し、就業規則や労使協定を適正に整備することが重要です。


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