労務管理

【実務解説】最低賃金の計算に含める手当・含めない手当とは?

2025年度も最低賃金が大幅に引き上げられ、
企業の「賃金計算の見直し」がますます重要になっています。

最低賃金を下回っていないか確認する際に、
どの手当を含めるべきか・除外すべきかを正しく理解しておく必要があります。

1. 基本の考え方

最低賃金を計算するときは、
原則として「毎月決まって支払われる各種手当」を含めて計算します。

📘 計算式(例:月給制の場合)

(基本給 + 各種手当) ÷ 1か月の平均所定労働時間 = 時間あたり賃金

この「時間あたり賃金」が、都道府県ごとの最低賃金額を上回っている必要があります。

2. 【含めてよい】手当と【含めない】手当

最低賃金の対象となる賃金には「算入されるもの」と「除外されるもの」があります。
以下の表で整理しましょう。

区分内容算入の可否
基本給毎月決まって支払われる賃金✅ 含める
役職手当職務内容に応じて定額で支払われる✅ 含める
資格手当資格保持を理由に毎月支給✅ 含める
職務手当業務遂行に対して毎月支給✅ 含める
通勤手当実費支給や定期代支給❌ 含めない
家族手当扶養家族の有無で変動❌ 含めない
精皆勤手当欠勤・遅刻がないことを条件❌ 含めない
残業手当・休日手当所定外労働や休日労働の割増分❌ 含めない
深夜手当22時~翌5時までの労働に対して支給❌ 含めない
賞与・臨時手当月1回を超える間隔で支給❌ 含めない

根拠:最低賃金法 第4条第3項、最低賃金法施行規則 第1条(算入しない賃金)

3. 注意すべきポイント(“名称”ではなく“実質”で判断)

厚生労働省は、

「手当の名称ではなく、実際の支給目的・内容で判断する」
としています。

たとえば、「通勤手当」と名付けていても、実際は職務手当として毎月一律で支給している場合、
その手当は「最低賃金に含める」と判断されます。

➡ 名称にとらわれず、内容で判断することが重要です。

4. 【事例紹介】判断ミスで是正指導を受けたケース

事例:製造業C社(従業員25名)

C社では、「皆勤手当」5,000円を支給していました。
賃金計算時にこの手当を含めて最低賃金を上回っていると判断していましたが、
監督署の調査で「皆勤手当は算入できない」と指摘を受けました。

再計算の結果、一部従業員が最低賃金を下回っており、
過去2か月分の差額を支給。是正報告書の提出を求められました。

このように、「手当の取扱いミス」は意外と多く、
企業にとって思わぬコスト負担につながることがあります。

5. 実務担当者が行うべきチェックポイント

✅ 手当を「算入対象」「除外対象」に分類しておく
✅ 所定労働時間を正確に把握しておく(シフト制は平均で)
✅ 固定残業代がある場合は、除外部分を正しく控除して計算
✅ 毎年の最低賃金改定後に、全従業員の再計算を行う

6. まとめ

  • 最低賃金の計算には「基本給+固定手当」を含める
  • 「通勤・家族・皆勤・残業・深夜」などは原則除外
  • 名称よりも“実質”で判断することが重要
  • 毎年の改定時期に必ず全員分を再確認しましょう

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