労務管理

【実務解説】最低賃金を下回っているかどうかの計算方法

毎年のように引き上げが続く「最低賃金」。
2025年度も全国的に大幅な改定が行われ、多くの企業で賃金の見直しが必要になっています。

では実際に、自社の従業員が最低賃金を下回っていないか
どのように確認すればよいのでしょうか。

本記事では、賃金形態ごとの具体的な計算方法と実務上の注意点をわかりやすく解説します。

1. 賃金の形態別に確認する

最低賃金は「時間あたりの金額」で定められています。
そのため、賃金が「時給」「日給」「月給」「歩合給」などの場合、
すべて 1時間あたりの金額に換算して比較する必要があります。

賃金形態計算方法備考
時給制時給額そのまま比較可能
日給制日給額 ÷ 1日の所定労働時間所定労働時間に注意
月給制月給額 ÷ 1か月の所定労働時間平均労働時間で換算
歩合給歩合給 ÷ 総労働時間(算定期間中)記録の保存が重要

2. 含めてよい手当・含めてはいけない手当

最低賃金に算入できるのは「基本給」と「毎月支払われる固定的な手当」です。
一方で、以下のような手当は最低賃金に含めることができません

含めることができる含められない
基本給・役職手当・資格手当・職務手当通勤手当・家族手当・住宅手当・残業代・精皆勤手当・臨時ボーナスなど

根拠:最低賃金法施行規則 第1条(算入しない賃金)

3. 【具体例】実際の計算方法

例:月給制の従業員

  • 基本給:180,000円
  • 資格手当:20,000円
  • 所定労働時間:160時間/月
  • 最低賃金:1,023円

計算式:
(180,000円+20,000円) ÷ 160時間 = 1,250円

➡ 1,250円 > 1,023円 → 最低賃金を上回っています。

4. よくある誤りと注意点

❌ 通勤手当や残業代を含めて計算している

→ 含められません。最低賃金の比較は「基本給+固定的手当」で行います。

❌ 固定残業代を時給換算に含めていない

→ 固定残業代は「みなし残業時間分」を控除したうえで、残りを最低賃金比較に含める必要があります。

❌ 所定労働時間の設定が実態と合っていない

→ 実労働時間が多い場合、時間あたりの単価が下がり、最低賃金を下回るおそれがあります。

5. 【事例紹介】賃金引上げをスムーズに行ったケース

飲食業B社のケース(従業員10名)

最低賃金改定後、B社では一部パート従業員の時給が最低賃金ギリギリであることが判明しました。
このままでは人件費増加が避けられないと悩んでいましたが、次のように対応しました。

対応内容:

  1. スタッフ全員の賃金を時給換算で再計算
  2. 効率改善(発注・清掃業務の分担)を行い、業務改善助成金を活用
  3. パート時給を一律30円引上げ

結果:

  • 助成金60万円を受給
  • 離職率が減少し、勤務定着率が上昇
  • 職場満足度も向上

6. まとめ

  • 最低賃金の比較は「1時間あたりの賃金換算」が基本
  • 固定的手当を正確に区分して計算することが重要
  • 毎年の改定時期には、全従業員の賃金を見直すことをおすすめします

人事担当者が早めにチェックしておくことで、
行政指導や支払差額の発生を防ぐことができます。

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