労務管理

【実務解説】標準報酬月額に含まれる「報酬」と「賞与」って?わかりやすく解説!

はじめに

社会保険料の算定の基礎となる「標準報酬月額」や「標準賞与額」。
その算定において重要なのが、「報酬」や「賞与」に何が含まれるのかという点です。

実務の現場では、

「通勤手当は報酬に含まれる?」
「見舞金や退職金はどう扱う?」

といったご質問をよくいただきます。

本記事では、健康保険法・厚生年金保険法の定義をもとに、実際の事例を交えてわかりやすく解説します。

1.「報酬」・「賞与」の基本的な考え方

📘 法的定義

健康保険法第3条第5項および第6項(厚生年金保険法第3条第1項第3号・第4号)では、

「労働者が労働の対償として受けるすべてのもの」
と定義されています。

つまり、「報酬等」とは、
労働の対価として、経常的・実質的に受け取るものすべてを含みます。

2.「報酬等」に含まれるもの(該当する例)

✅ 基本給・各種手当

給与規程などに基づいて定期的に支払われるものは、名称を問わず「報酬等」に含まれます。

【該当する具体例】

  • 基本給・給料・俸給
  • 賞与・インセンティブ(成果給)
  • 通勤手当・住宅手当・扶養手当・勤務地手当
  • 管理職手当・役職手当・休職手当・休業手当・待命手当 など

💡 ポイント
労働の提供と支払いが同時でなくても、将来の労働に対する支給や休業中の支払いでも「報酬等」に含まれます。

また、会社から食事や住宅などを支給される現物給与も、金銭と同様に「報酬」として扱われます。

3.「報酬等」に含まれないもの(該当しない例)

❌ 労働の対償ではないもの

労働とは関係なく、恩恵的または一時的に支給されるものは「報酬等」には含まれません。

【該当しない具体例】

  • 傷病手当金
  • 労災による休業補償
  • 解雇予告手当
  • 退職金(※)
  • 見舞金・結婚祝い金・餞別金
  • 出張・赴任旅費の実費弁償

(※)ただし、退職金を毎月上乗せして支給している場合は、
経常的な収入として「報酬等」に含まれる場合があります。

4.例外的なケースと実務判断のポイント

💬 恩恵的でも「報酬等」に該当するケース

たとえば、労働協約などに基づき定期的に支給される見舞金(差額補填など)は、
実質的に労働の対価とみなされ、「報酬等」に含まれます。

💬 一時的な支給は除外される場合も

一方で、支給事由や金額が不確定な「大入袋」など、
常態として受けるものではない支給は、「報酬等」に含めないのが原則です。

5.【実務事例】通勤手当と見舞金の扱いの違い

【事例1】通勤手当の場合

社員Aさんは、公共交通機関で通勤しており、月1万円の通勤手当を受け取っています。
➡ 通勤手当は「勤務に伴って定期的に支給される」ため、報酬に該当します。
 したがって、標準報酬月額に含めて計算する必要があります。

【事例2】見舞金の場合

社員Bさんが入院した際、会社が「お見舞い」として一時金2万円を支給しました。
➡ 労働の対償ではなく、恩恵的に支給される一時金のため、報酬には含まれません。

ただし、見舞金であっても「休業手当の差額補填」として毎月支給される場合は、
実質的に給与の一部とみなされ、報酬に含まれる場合があります。

6.【実務の注意点】名称より「実態」で判断!

「手当」と名がつけば必ず報酬扱い?
→ いいえ、重要なのは“支給の目的と性質”です。

たとえば、「通勤手当」でも実際には出勤実態がなく在宅勤務手当のような性質を持つ場合、
また「特別手当」として支給されていても一度きりの恩恵的支給である場合などは、
名称にかかわらず実態で判断します。

7.まとめ:報酬・賞与の判断基準

区分報酬等に含まれる報酬等に含まれない
定期的・経常的に支給される基本給・手当・賞与・通勤費
労働の対価ではない見舞金・餞別金・労災補償金
実費弁償出張・赴任旅費
恩恵的だが労働協約等に基づく含まれる

8.まとめと実務対応のポイント

  • 「報酬」や「賞与」は、労働の対価として経常的に受け取るものすべてが対象。
  • 名称ではなく支給の目的と実態で判断。
  • 見舞金や退職金でも、支給方法によっては報酬扱いになる場合がある。
  • 判断に迷う場合は、日本年金機構の「標準報酬月額の事例集」を参照するのが確実。

根拠法令・参考情報

  • 健康保険法 第3条第5項・第6項
  • 厚生年金保険法 第3条第1項第3号・第4号
  • 日本年金機構『標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集』
    👉 公式サイトはこちら

ひらおか社会保険労務士事務所より

「どこまでが報酬になるのか?」「特別手当の扱いは?」など、
判断に迷うケースは実務上多く見られます。
当事務所では、標準報酬月額の算定・届出チェックや、
賃金規程の見直し支援も行っています。

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