企業では、総合職の従業員に「転勤の可能性」を明示して採用しているケースが一般的です。
しかし、実際に転勤命令を出した際、従業員が拒否した場合、会社としてどのような対応ができるのでしょうか。
本記事では 裁判例・就業規則の重要性・実務での注意点 をわかりやすく解説します。
✅ 結論:懲戒処分は可能だが、就業規則と手続きが必須
労働契約や就業規則で転勤の可能性が規定されている総合職が、
正当な理由なく転勤を拒否した場合、懲戒処分は原則として可能 です。
ただし、以下の条件を満たすことが重要です。
| 判断ポイント | 実務での確認事項 |
|---|---|
| 転勤命令の合理性 | 業務上の必要性があるか |
| 労働者の不利益 | 家庭事情など過度な不利益がないか |
| 就業規則 | 懲戒事由に「業務命令違反」が明記されているか |
| 手続き | 懲戒委員会など社内手続の遵守 |
⚖ 参考裁判例:東亜ペイント事件(最高裁 昭和61年)
最高裁は転勤命令について、以下の基準を示しました。
転勤命令は、
① 業務上の必要性があり、
② 不当な動機・目的がなく、
③ 労働者に著しい不利益を与えない限り、
権利の濫用にはあたらない。
この基準を満たす転勤命令を拒否した場合、業務命令違反=懲戒事由 となる可能性があります。
🧭 実務でよくある事例
📝 事例:家庭の事情を理由に転勤拒否
〈状況〉
総合職の男性社員に対し、業務拡大のため他県への転勤命令を発令。
社員は「親の介護」を理由に拒否。
〈企業対応〉
会社は状況を確認し、介護の実態や代替手段(異動延期など)を検討。
正当な介護理由と判断し、転勤命令を撤回。懲戒処分は行わず。
〈ポイント〉
⚠ 家庭事情がある場合は一律に懲戒処分を行わず、実態を確認すること。
🚫 事例:職場不満による転勤拒否
〈状況〉
「今の部署が気に入っている」「引越ししたくない」として転勤を拒否。
〈対応〉
話し合いを経ても理由が合理的でないため、『業務命令違反』として
戒告処分を実施(就業規則の懲戒事由に基づく)。
〈ポイント〉
✅ 自己都合のみの拒否は「正当な理由」とならない。
| チェック項目 | 実務での対応 |
|---|---|
| 🔍 就業規則 | 「転勤命令」「懲戒事由」を明記しているか |
| 🗂 記録 | 拒否理由・面談内容を記録に残す |
| 🗣 話し合い | 一度話し合いの機会を設け、事情確認 |
| ⚖ 懲戒の相当性 | 重すぎる処分(懲戒解雇など)は慎重に |
🏢 企業が準備しておくべきこと
✅ 就業規則の整備
- 「転勤の可能性」「業務命令違反による懲戒事由」の明記が重要
✅ 労働条件通知書への記載
- 総合職採用時に「勤務地の限定なし」と記載する
✅ 記録の保存
- 拒否までの経緯・面談記録を残しておく
🔍 まとめ
正当な理由のない転勤拒否は懲戒処分の対象となり得ます。
ただし、家庭事情などの個別事情を慎重に確認し、
手続きに沿ったうえで公正に判断することが重要です。
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