こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。
従業員が私生活で問題を起こし、「万引きで逮捕・起訴された」 という連絡が入った場合、
企業としてどのように対応すべきか、大きな判断を迫られます。
「会社の信用を守るために懲戒解雇したい」
そう考える経営者も少なくありませんが、法的には慎重な判断が求められます。
✅ 結論:逮捕・起訴のみで懲戒解雇はできません
従業員が万引きなどの 私生活上の犯罪行為をしたからといって、
直ちに懲戒解雇が認められるわけではありません。
懲戒解雇が認められるには、
その行為が会社の社会的信用を著しく害したかどうか
が重要な判断ポイントになります。
⚖️ 法的な考え方(日本鋼管事件:最高裁)
労働契約は、企業秩序維持のために必要な範囲で労働者を拘束しますが、
従業員の 私生活全般を支配するものではありません。
したがって、私生活上の非行 は次の条件を満たす場合に限り懲戒の対象となります。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 行為の性質 | 社会的非難の程度、悪質性 |
| 会社への影響 | 信用失墜・顧客離れの有無 |
| 企業の種類・規模 | 接客業・金融業など信用重視業態か |
| 本人の職務 | 管理職・接客担当など立場の影響 |
| 情状 | 反省の有無、故意・常習性 |
🏢【事例】スーパー店員による万引き事件の場合
| 状況 | 判断傾向 |
|---|---|
| 食品スーパーの従業員が万引きで逮捕 | 顧客からの信用低下 → 懲戒解雇が合理的と判断される可能性 |
| 工場勤務者が自宅近くの店舗で万引き | 業務に直接関係なし → 解雇無効の可能性 |
| 管理職・店長など責任ある立場での万引き | 企業イメージへの重大影響 → 懲戒の正当性が認められることも |
🛠 実務対応のポイント(社労士視点)
| 対応策 | 実務のポイント |
|---|---|
| ❗ 事実確認の実施 | 犯行の有無、起訴内容、本人の説明 |
| 📝 就業規則の確認 | 懲戒事由(信用失墜行為)に該当するか |
| 🗣 本人への意見聴取 | 弁明の機会を与える(労働契約法15条) |
| 🚫 即時解雇は避ける | 停職・出勤停止で判断を保留する選択肢 |
| 💬 社内・顧客への説明 | 誤解を招かないよう管理職にのみ共有 |
❗注意:懲戒解雇の乱用は「権利濫用」とされ無効に
懲戒解雇は最も重い処分です。
正当性がなければ、裁判で無効となり、賃金支払い命令を受ける可能性 もあります。
💬 社労士からのアドバイス
「犯罪=即解雇」は大きなリスクです。
感情ではなく、会社への影響・社会的信用への毀損を冷静に評価し、
書面に残る判断プロセスを整えることが重要です。
就業規則が曖昧な場合、トラブル発生時の対応が難しくなります。
事前に整備しておくことで、企業を守ることができます。
📩 懲戒・就業規則・トラブル対応でお困りですか?
初回相談は無料で承っております。
状況に応じた対応策、懲戒処分の妥当性判断など、実務に即してサポートいたします。