~従業員を守るために、今すぐ取り組むべきポイント~
1. カスハラ対策が「企業の義務」に
近年、ニュースなどでも取り上げられるようになったカスタマーハラスメント(カスハラ)。
悪質なクレーム対応などにより、従業員が精神的に追い詰められるケースも増えています。
こうした状況を踏まえ、2025年6月に労働施策総合推進法が改正されました。
施行日(公布日から1年6か月以内に定める日)以降は、カスハラ防止措置を講じることが事業主の義務となります。
2. カスハラとは?(法令上の定義)
法改正により、カスハラは以下の3要素をすべて満たすものとされています。
- 顧客や取引先などからの言動であること
- 業務の適正な遂行に関係するものであること
- 従業員に対して業務上の適正な範囲を超える言動であり、就業環境を害するもの
厚生労働省のマニュアルによると、次のような行為がカスハラに該当する可能性があります。
- 長時間にわたる執拗なクレーム
- 威圧的な言動や暴言
- SNSや口コミサイトでの誹謗中傷
- サービス担当者を名指しした嫌がらせ
3. カスハラがもたらす影響
カスハラは、従業員の心身の健康を害するだけでなく、企業経営にも深刻な影響を及ぼします。
- 対応に追われることによる生産性の低下
- 人員不足・離職率の上昇
- 他の顧客へのサービス低下や企業イメージの悪化
実際に、厚労省の調査では「過去3年間で2番目に多かったハラスメントがカスハラ」という結果が出ています。
4. 【実務対応】企業が取るべき6つのステップ
カスハラへの対応は「発生後の対処」だけでなく、「予防」が何より大切です。
以下の6つを軸に体制を整備しましょう。
① カスハラ防止方針の明確化
経営トップが「顧客からの不当な要求には毅然と対応する」という姿勢を明確に示すことが第一歩です。
社内掲示やミーティングで方針を共有しましょう。
② 対応マニュアルの整備
現場が混乱しないよう、対応手順・報告ルート・記録様式を整備しておくことが重要です。
例:クレーム発生時の「一次対応 → 上司報告 → 記録保存 → 相談窓口報告」の流れを明文化。
③ 相談窓口の設置
2020年に義務化されたパワハラ相談窓口をカスハラにも対応できる窓口として兼用できます。
担当者には、事実確認や傾聴スキルの教育を定期的に実施しましょう。
④ 従業員研修の実施
従業員が「どこまでが顧客対応で、どこからがハラスメントか」を理解できるよう、
ケーススタディ研修を行うのがおすすめです。
💡 事例
飲食店で顧客から「気に入らない」と何度も料理を作り直させる要求が発生。
店舗責任者が毅然と断り、上司へ報告・記録した結果、後日同様のクレームが減少した。
⑤ 被害者への配慮
被害を受けた従業員には、安全確保・精神面のケアが必要です。
暴言・暴力が伴う場合は、顧客と距離を置かせ、医療機関受診も勧めましょう。
⑥ 再発防止の仕組み
発生後も放置せず、原因分析・社内ルールの見直し・教育の継続が不可欠です。
厚労省の「カスタマーハラスメント対策チェックシート」も活用しましょう。
5. カスハラと企業の法的責任
企業が適切な対応を怠った場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。
一方で、十分なカスハラ対策を講じていた企業は責任を免れた判例もあります。
つまり、日頃からの備えこそが、従業員と企業の双方を守る「防波堤」となるのです。
6. まとめ:今から始めるカスハラ対策
2025年の改正法施行により、カスハラ対策は企業の義務になります。
対応が遅れれば、労務トラブル・離職・企業信用の低下などにつながるおそれがあります。
今のうちから、
✅ 社内方針の明文化
✅ 相談窓口の周知
✅ マニュアル・研修の整備
を進め、従業員が安心して働ける職場環境を整えましょう。
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