労務管理

コンプライアンス違反を理由に出勤停止処分となった管理職の人事評価を下げることはできますか?

🔹結論

コンプライアンスに反する行為が管理職として不適切である場合は、人事評価を下げることが認められる可能性があります。
一方で、「懲戒処分(出勤停止)を受けたこと」そのものを理由に評価を下げることは、一事不再理の原則に反するおそれがあり、慎重な判断が必要です。

🔹法的な考え方

人事評価の裁量は企業にありますが、評価の理由や基準が合理的でなければ、後に労働争議や訴訟に発展する可能性があります。

① コンピテンシー評価(行動評価)としての減点は可能

管理職に求められる行動指針に「法令遵守」「職場風土の維持」「模範的行動」などが明示されている場合、
コンプライアンス違反は評価基準に照らして減点理由となり得ます。
この場合、「評価基準に基づく減点」として説明でき、懲戒処分とは別の次元で扱うことができます。

② 「処分を受けた」こと自体を理由に減点するのはNG

一方で、「出勤停止処分を受けた」という懲戒処分そのものを理由に評価を下げるのは、
同一の行為について二重に制裁を科すこと(=一事不再理)となるおそれがあります。
この場合は、懲戒と評価が同じ目的で重なってしまい、違法・不当評価と判断されるリスクがあります。

🔹実務上のポイント

  • 評価基準に「コンプライアンス」「職務行動規範」を明示しておくこと
     → 管理職行動評価シートなどに「模範的行動」「法令遵守意識」を具体的に定義しておく。
  • 処分内容と評価は明確に切り分ける
     → 「処分」は懲戒制度に基づくペナルティ、「評価」は将来の育成・登用判断のための指標として区別する。
  • 評価面談では事実と行動のみに基づいて説明する
     → 「あなたが出勤停止になったからではなく、コンプライアンス意識の欠如が評価基準に照らして問題があった」と説明する。

🔹実際の事例

ある製造業の事例では、管理職が取引先との飲み会で不適切な発言を行い、社内規程に基づき3日間の出勤停止処分を受けました。
その後の人事評価で、上司は「出勤停止となったため評価を下げる」と記載しましたが、
本人から「二重処分だ」との異議申し立てがあり、社内で問題となりました。

最終的に、会社は評価コメントを
「処分を受けたため」から「法令遵守および行動規範に照らして問題があった」に修正し、
「行動評価の観点からの減点」として扱うことで整合性を取りました。
このように、評価理由の書き方や根拠付けを誤るとトラブルにつながるため、慎重な取り扱いが必要です。

🔹まとめ

判断基準評価を下げられるか留意点
コンプライアンス違反という行動が問題○ 可能行動評価・職務基準との整合性が必要
懲戒処分を受けたこと自体✕ 不可一事不再理の原則に反するおそれ
評価基準にコンプライアンス項目なし△ 注意基準の見直しが必要

🔹実務担当者へのアドバイス

人事評価は処分とは別の制度として運用し、**評価項目の「透明性」と「一貫性」**を保つことが重要です。
特に管理職層には、評価前に「法令遵守・倫理行動の重要性」を再確認させる研修などを実施し、
再発防止と組織風土の向上につなげることが望まれます。


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