労務管理

「労災かくし」は犯罪です

〜知らなかったでは済まされない企業責任〜


❖ 「労災かくし」とは?

「労災かくし」とは、本来労災保険の対象となる労働災害が発生したにもかかわらず、
会社が労働基準監督署へ報告しなかったり、健康保険で処理したりする行為を指します。

つまり、

「うちの会社でケガをしたと知られたくない」
「労災にすると面倒だから健康保険で治療しておこう」

といった“安易な判断”が、実は法律違反になるのです。

❖ 労働基準法上の義務

事業主は、労働者が業務中や通勤中に負傷・疾病・死亡した場合、
所轄の労働基準監督署へ「労働者死傷病報告書」を提出する義務があります(労働安全衛生規則第97条)。

また、労災保険を使う場合は、健康保険証を使ってはいけません。
労災による治療は「労災指定医療機関」での受診が原則です。

❖ 「労災かくし」はなぜ問題になるのか?

「労災かくし」は、労災保険制度の信頼を損ない、労働者の保護を妨げる行為です。
法律上は「労働者死傷病報告書の未提出」として処罰の対象となり、
6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(労働安全衛生法第120条)。

特に、労働者が後遺障害や通院を要するケースで会社が報告を怠ると、
監督署の調査で発覚し、会社名が公表されることもあります。

❖ 【実際の事例】

事例:製造業で発生した「労災かくし」

工場内で作業員が機械に手を挟まれ、指を骨折。
上司は「健康保険で行っておいて」と指示し、会社は監督署に報告しなかった。

後日、労働者が通院費の補償を求めて監督署に相談。
調査の結果、会社が意図的に報告を怠っていたことが判明し、
会社代表者が労働安全衛生法違反で書類送検されました。


❖ 実務で注意すべきポイント

  • 軽微なケガでも、業務中なら必ず報告・確認を
  • 「健康保険で処理」は原則NG(労災保険を使用)
  • 再発防止策を文書化し、社内で共有
  • 労働基準監督署への報告期限(原則すみやかに)を遵守
  • 労災保険給付の手続きは、社労士へ相談を

❖ 労災が発生したときの対応フロー(簡略版)

  1. ケガの状況を確認し、応急処置を行う
  2. 労災指定医療機関で受診させる
  3. 労災保険の請求書類を作成(様式第5号など)
  4. 労働基準監督署へ報告書を提出(死傷病報告)
  5. 再発防止策の検討と社内周知

❖ まとめ

「労災かくし」は、知らずに行ってしまうケースが多い違反ですが、
「知らなかった」では済まされません。

従業員を守ることが、結果的に会社を守ることにつながります。
労災が発生した際は、社労士など専門家に早めに相談しましょう。


📚 参考リンク
厚生労働省|労働災害が発生したとき


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