労務管理

【介護施設向け】利用者・家族からのハラスメント(カスハラ)から従業員を守るために、会社が取るべき実務対応|ひらおか社会保険労務士事務所

介護の現場では、利用者やその家族からの不当な要求・暴言・過度なクレームなど、いわゆる カスタマーハラスメント(カスハラ) が深刻な課題となっています。

介護施設は「顧客からサービス提供者へ」という力関係が発生しやすく、感情労働であるため、従業員のメンタル負荷も大きくなりがちです。

では、事業者はどこまで従業員を守る義務があるのでしょうか?

結論として、
介護施設は“従業員を守るための仕組み”を整備し、相談があったときには迅速かつ組織的に対応する義務があります。

(厚生労働省「パワハラ防止指針」にも、カスタマーハラスメントへの対応体制の整備が望ましいと明記)

この記事では、介護施設が行うべき実務対応を 事例を交えてわかりやすく 解説します。


1. 法的根拠:カスタマーハラスメントへの対応は“事業主の責務”

厚生労働省の以下の指針では、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)について、事業主が対応体制を整備すべきと示されています。

  • 労働施策総合推進法 第30条の2
  • パワーハラスメント防止指針(2020年厚生労働省告示第5号)

指針では、事業主は次の事項が「望ましい」とされています。

  • カスハラの相談に応じる体制
  • 被害者への配慮措置
  • 迷惑行為者への対応基準
  • 従業員への教育研修

つまり、「従業員が泣き寝入りする状況」を放置してはいけないという考え方です。


2. 介護施設が整備すべき5つの基本対策

✔ ① カスタマーハラスメント相談窓口の設置

  • 利用者や家族からのクレーム・暴言について相談できる窓口を設置
  • 担当者を明確化し、職員に周知
  • 匿名相談も可能にすると利用しやすい

〈事例〉

夜勤中、利用者家族が深夜に怒鳴りながら電話し、特定職員を名指しで批判。
窓口に相談が入り、上長が対応を引き継ぎ、職員本人は以後直接対応しないことで精神的負担を軽減できた。


✔ ② カスタマーハラスメント対応マニュアルの作成

最低限、以下の内容を含めると実務で使いやすいです。

  • 暴言・暴力・過度な要求に該当する行為の定義
  • 対応フロー(1次対応、2次対応、管理者判断)
  • 記録(エビデンス)の残し方
  • 迷惑行為が続く場合の措置
  • 緊急時(暴力等)の通報手順

ポイント
従業員が「どのラインでエスカレーションしていいか」を迷わない構成にすること。


✔ ③ 従業員への教育研修の実施

  • 悪質なクレームへの対応方法
  • 境界線を引くコミュニケーション
  • 危険を感じたときの回避方法
  • 個人で抱え込まない文化づくり

特に介護現場は「優しくしなければいけない」という風土から、
不当な要求にも応じてしまう体質が生まれやすいため、研修が必須です。


✔ ④ 迷惑行為者への組織的対応(複数対応の徹底)

資料の本文でも「複数名での対応」が重要とされています。

  • 感情的な家族対応は原則1対1を避ける
  • 必要に応じて管理者・生活相談員が同席
  • 記録を残し、次回の対応に活かす

〈事例〉

「うちの親を優先しろ!」と要求する家族への対応を、職員が一人で抱え込み精神的に限界に。
以降は、管理者+相談員の2名対応に切り替え、状況が改善。


✔ ⑤ 被害職員へのメンタルヘルスケア

  • 心身不調の兆候がある職員への声かけ
  • 休養や配置転換の検討
  • 必要に応じて産業医や専門家につなぐ
  • 第三者に責任を求めない風土づくり

介護現場では「我慢が当たり前」という空気があり、不調が表に出にくい点に注意が必要です。


3. 介護施設でよくあるカスタマーハラスメント事例と対応ポイント


事例①:過度な要求(「特別扱いしろ」)

状況
利用者家族が「他の入居者よりも優先して対応しろ」と要求。

対応

  • マニュアルに基づき、複数名で面談
  • 施設の提供サービス範囲を説明
  • 要求が不当であることを丁寧に伝える
  • エスカレートした場合は管理者が対応

事例②:暴言や人格否定

状況
「こんな仕事もできないのか」「無能だ」などの暴言。

対応

  • 職員を交代し、2名以上で対応
  • 記録を残し、施設として対応方針を検討
  • 職員本人のメンタルフォロー
  • 悪質な場合は、文書で注意喚起 → 施設側の対応制限も検討

事例③:執拗な電話・深夜クレーム

状況
深夜に何度も電話し、怒鳴りつける行為。

対応

  • 着信記録や内容を記録
  • 相談窓口で対応し、担当を一本化
  • 悪質な場合は、文書警告(必要に応じ行政・弁護士と連携)

事例④:身体的暴力・威圧行為

状況
利用者が叩く・つねる/家族が机を叩くなどの威圧行為。

対応

  • 直ちに複数対応
  • 必要であれば警察・行政への相談
  • 従業員の安全を最優先
  • 今後の介護継続の可否まで検討

4. 組織が取るべき“毅然とした姿勢”

カスタマーハラスメントは、
従業員が一人で対処する問題ではありません。

組織は次のメッセージを明確に発信することが重要です。

  • 不当な言動から従業員を守る
  • 適切なサービスは提供するが、過度な要求には応じない
  • 暴言・暴力は決して許容しない

この姿勢が、
従業員の安心感 → 定着率向上 → 施設全体のサービス品質の向上
につながります。


5. まとめ:カスハラ対策は“従業員を守る仕組みづくり”がすべて

介護施設が行うべきことは、

  • 相談窓口の設置
  • 対応マニュアル整備
  • 教育研修
  • 組織的な対応(複数対応)
  • メンタルケア
  • 悪質な迷惑行為者への毅然とした対応

こうした仕組みを整えることで、
従業員が安心して働ける環境が生まれ、利用者へのサービスも安定します。


👉 介護施設向け「カスハラ対応マニュアル」「相談窓口体制」作成サポートできます

ひらおか社会保険労務士事務所では、
介護事業に特化した カスハラ対応マニュアル・研修資料・職員説明資料 を作成しています。

介護特有の事例を踏まえて、御社用にカスタマイズ可能です。

以下からお気軽にご相談ください👇

👉 無料相談・お問い合わせはこちら(ひらおか社会保険労務士事務所)