労務管理

【実務で役立つ】随時改定とは?わかりやすく解説(事例つき)/ひらおか社会保険労務士事務所

社会保険料の計算には「定時決定(7月決定・9月反映)」と「随時改定(随時の見直し)」の2種類があります。
このうち 随時改定 は、昇給・降給・手当の変更などで賃金が大きく変動した際に、
実際の給与額に合わせて社会保険料を見直す制度 です。

社会保険料が実際の給与と乖離したままになるのを防ぎ、
従業員が将来受け取る年金額にも影響するため、労務管理において非常に重要な制度です。


1. 随時改定とは?

随時改定とは、
昇給・降給・手当変更などで給与が大きく変動したときに、標準報酬月額(=社会保険料の基礎)を改定する仕組み のことです。

社会保険料は本来、

  • 資格取得時
  • 毎年4〜6月の賃金平均(定時決定)
    で決まります。

しかし、給与の増減が大きく起きた場合は、年1回の見直しを待つと現実の給与との差が出てしまうため、
随時で標準報酬月額を変更する必要がある のです。

2. 随時改定のメリット

随時改定を行うことで、

  • 実際の給与に見合った社会保険料になる
  • 本人負担・会社負担の保険料の過不足を防げる
  • 将来受け取る年金額が適正になる

といったメリットがあります。

労務担当者としては、
昇給・降給があったときに「随時改定の要件に当てはまるか」を必ず確認する習慣が必要 です。


3. 随時改定が行われるための“3つの要件”

随時改定は、以下の「3つすべて」に該当した場合に行います。


【要件①】固定的賃金の変動がある

ここで重要なのは「固定的賃金」である点です。

固定的賃金とは

支給額や支給率があらかじめ決まっている賃金のこと。

例)

  • 基本給
  • 昇給・降給
  • 時給 → 月給へ変更
  • 固定残業代(みなし残業)の変更
  • 住宅手当・役付手当など固定手当の追加・変更
  • 通勤手当の増額 など

※逆に「歩合給」「残業代」など毎月変動するものは固定的賃金に含まれません。


【要件②】3か月の平均賃金が“2等級以上”動いた

固定的賃金が変動した月を含めた 3か月間の平均賃金 を、
改定前の標準報酬月額と比較し 2等級以上の差 がある場合に対象となります。

標準報酬月額とは?

社会保険料を計算するために、給与額を区分した表に当てはめて決める「等級」です。
(例:月収 230,000円 → 標準報酬月額 22万円 等)


【要件③】3か月すべて支払基礎日数が17日以上

次の3か月とも、支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)あることが必要です。

支払基礎日数とは?

賃金計算の基礎となった日数のこと。

  • 月給者:暦日数
  • 時給者:出勤日数
    ・有給休暇取得日は「基礎日数」に含まれます。

※17日未満の月が1つでもあると随時改定はできません。


4.【実務事例】随時改定が必要になるケース


✔ 事例①:昇給により標準報酬月額が2等級上がったケース

4月に基本給が20,000円昇給

4月・5月・6月の平均賃金を計算

改定前より2等級以上上がっていた
7月から標準報酬月額を変更

ポイント
昇給の場合、随時改定に該当することが非常に多いです。


✔ 事例②:通勤手当の増額で賃金が変わったケース

従業員が引っ越しをして通勤距離が変わり、
通勤手当が月5,000円 → 15,000円に増額(10,000円UP)

その後の3か月の給与平均が改定前より2等級上がれば、
随時改定の対象

ポイント
通勤手当も「固定的賃金」に該当します。


✔ 事例③:時給制 → 月給制へ変更したケース

雇用区分の変更などで 時給社員が月給制へ転換
これも固定的賃金の変更に該当するため、随時改定の判断が必要です。


✔ 事例④:手当の廃止で固定的賃金が下がったケース

会社の制度改定により住宅手当(10,000円)が廃止。
給与構成の変更で2等級以上下がった場合、
標準報酬月額が下がる随時改定を行う


5. 随時改定が“できない”ケース

  • 昇給・降給があっても「2等級未満」の変動だった
  • 3か月のうち1か月が支払基礎日数17日未満
  • 歩合給だけ増減した(固定的賃金の変動ではない)
  • 産休・育休などで支払基礎日数が不足している

これらの場合は随時改定には該当しません。


6. 根拠法令

  • 厚生年金法 第23条(改定)
  • 健康保険法 第43条(改定)
  • 厚生年金法 第20条(標準報酬月額)

まとめ

随時改定は、従業員の昇給・降給や手当の増減があった際、
適切な社会保険料に見直すための重要な手続き です。

特に次の3つが実務の判断ポイントです:

  1. 固定的賃金の変動があるか
  2. 3か月の平均で2等級以上動いているか
  3. 支払基礎日数が17日以上あるか

給与改定があった際は、この3つを必ず確認し、
適切なタイミングで標準報酬月額を変更していきましょう。


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