労務管理

【実務解説】カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル|ひらおか社会保険労務士事務所

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は、ここ数年で急増しており、多くの企業で深刻な労務問題となっています。
厚生労働省も対策マニュアルを公開し、企業として対応すべき指針を示しています

この記事では、カスハラの実態、企業が取るべき対策、実務での運用ポイントを「ひらおか社会保険労務士事務所」として分かりやすく解説します。

1. カスタマーハラスメントの発生状況

厚労省の調査によると、直近3年間で企業の48.2%がカスハラ相談を受けた経験があることが報告されています

さらに、

  • 「増加している」と回答した企業…19.5%
  • 「横ばい」…31.9%

と、カスハラが広がっていることが明確になっています。

2. カスタマーハラスメントとは

マニュアルでは、カスハラを次のように定義しています

顧客等による、社会通念上の許容範囲を超える悪質なクレームや迷惑行為のこと。

単なるクレームや改善要求は含まれません。
カスハラとされるのは、例えば以下のような行為です

■ カスハラに該当する行為の例

  • 土下座の強要
  • 長時間の拘束・謝罪要求(1時間以上電話を切らない等)
  • 暴言・威嚇
  • 従業員の人格否定
  • SNSでの晒し行為・誹謗中傷
  • 反社会勢力をほのめかす発言
  • 「クレームを受けた担当者を解雇しろ」という要求

業種別に見ても、小売業・宿泊業・飲食業・運輸業など幅広く発生していることが示されています

3. カスタマーハラスメント対策の必要性

(1) 従業員への悪影響

マニュアルでは、従業員への深刻な影響が指摘されています

  • 精神的不調(不眠、抑うつ、耳鳴り等)
  • 離職の増加
  • パフォーマンス低下
  • 安全配慮義務違反のリスク

(2) 企業への影響

  • ブランドイメージの悪化
  • ほかの顧客へのサービス提供に支障
  • 職場の雰囲気悪化
  • 労災認定や損害賠償請求など法的リスク

実際に、適切な対応を怠った企業側に損害賠償を命じた裁判例も紹介されています

4. 企業が取り組むべきカスタマーハラスメント対策

厚労省マニュアルでは、企業に必要な対策として次の5つを示しています

① 事前準備:方針の明文化と周知

企業は次のような方針を明確にします。

  • カスハラは許容しないこと
  • 不当要求には応じないこと
  • 従業員を守ることを最優先とすること

就業規則・接客マニュアルに組み込んだ上で、社員教育を実施します。


② 現場対応のルールづくり

以下のような 「一次対応~エスカレーションの流れ」 を明文化します

  1. 初期対応(事実確認・冷静な対応)
  2. 要求が不当かの判断
  3. 対応困難な場合は上司に引き継ぐ
  4. 悪質な場合は警察や弁護士へ相談
  5. 記録の保存(日時・内容・対応状況)

③ 従業員を守る仕組みづくり

  • 一人で対応させない
  • 心理的負担が大きい場合は配置転換等の配慮
  • 相談窓口の設置
  • 産業医・カウンセリング利用

④ 外部機関との連携

暴言や威嚇、ストーカー的言動、ネットを使った誹謗中傷などは、
以下のような外部機関へ相談が必要になります

  • 警察
  • 弁護士
  • 法務局
  • SNS事業者(投稿削除依頼)
  • 違法・有害情報相談センター

⑤ 顧客への啓発

  • 店舗に掲示(「迷惑行為はお断りします」)
  • HPやパンフレットでの方針公表
  • 鉄道会社などが行う「迷惑行為防止ポスター」も参考に可能

5. 【実務で役立つ】カスタマーハラスメント事例

以下は、実際の企業で起こり得る典型例をまとめたものです。


◆ 事例①:長時間のクレーム電話による精神的負担

状況
顧客が「責任者を出せ」と1時間以上電話を切らず、担当者に人格を否定する発言を繰り返した。

問題点

  • 従業員の健康被害
  • 企業の安全配慮義務違反の恐れ
  • 業務が停止し他の顧客対応ができない

適切な対応

  • 一定時間で上司にエスカレーション
  • 警告し、改善されない場合は通話終了
  • 記録を残し、必要に応じて警察へ相談

(※マニュアルでは「長時間の拘束」は典型例として記載)

◆ 事例②:SNSで「晒す」と脅迫されたケース

状況
来店した顧客が「気に食わない対応をしたからSNSで晒す」と従業員を威嚇。

問題点

  • 名誉毀損の可能性
  • 風評被害リスク

対応

  • 冷静に事実を確認
  • 不当要求には応じない
  • SNS事業者へ削除依頼
  • 必要に応じて弁護士へ相談

(マニュアル28〜30ページの「SNS誹謗中傷型」に該当)

◆ 事例③:不当な要求(従業員解雇の要求)

状況
顧客が「担当者をクビにしろ」と強く要求。

問題点

  • 業務指揮命令系統への介入
  • 従業員の人格権侵害

対応

  • 企業として処分権限は顧客にないと説明
  • 不当要求として対応拒否

(マニュアル10ページの「要求が不当な場合」に該当)

6. まとめ:企業が作るべき仕組みは「ルール化」と「記録」

カスタマーハラスメントは、今や「企業の責任」が問われる時代です。
特に中小企業では、ルールが明確でないために現場が対応に苦しむケースが多く見られます

厚労省マニュアルでも強調されていますが、
企業が行うべきことは以下の3点に集約されます。


✔ ① 方針の明文化(就業規則・マニュアルに記載)

✔ ② 現場対応フローの整備(エスカレーション・対応拒否の基準)

✔ ③ 記録と振り返り(再発防止・法的リスク回避)


カスタマーハラスメント対策の導入サポートを行っています

ひらおか社会保険労務士事務所では、

  • カスハラ対策規程の作成
  • 対応マニュアル・チェックリストの整備
  • 従業員研修
  • クレーム対応の外部相談窓口
  • 就業規則への反映

など、企業規模に応じたサポートを行っています。

「うちはまだ大丈夫」と思っていても、実際には多くの企業でカスハラは突然発生します。
事前準備が“従業員を守ること”につながります。


👉 初回相談は無料です。お気軽にご相談ください。

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