〜「やむを得ない事由」が必要な理由と実務対応〜
❖ 結論:正社員よりも「途中解雇」ははるかに難しいです
有期労働契約(契約社員やパートタイマーなど)を結んでいる従業員については、
契約期間の途中で解雇するには「やむを得ない事由」が必要です。
つまり、正社員の解雇よりも厳しい基準が適用されます。
単に「勤務態度が悪い」「業績が悪化した」といった理由では、
途中解雇が認められないケースが多いのです。
❖ 法的根拠
- 民法 第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
「当事者が雇用の期間を定めたときは、やむを得ない事由がある場合でなければ、各当事者はその契約を解除することができない。」
- 労働契約法 第17条(契約期間中の解雇等)
「使用者は、期間の定めのある労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約の途中で解雇することができない。」
- 労働契約法 第16条(解雇)
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、その権利を濫用したものとして無効とする。」
❖ 「やむを得ない事由」とは?
「やむを得ない事由」とは、契約を続けることが著しく困難な場合を指します。
この判断は、正社員の解雇よりも厳格で、
厚生労働省の通達(平成30年12月28日 基発1228第17号)でも次のように示されています。
「無期労働契約の解雇における『客観的に合理的な理由』よりも、
有期契約の途中解除で求められる『やむを得ない事由』は、
より狭い範囲で認められる。」
❖ 【実務事例】途中解雇が認められなかったケース
事例:契約社員の勤務態度を理由に解雇したケース
- 契約期間:6か月(更新あり)
- 解雇理由:遅刻や勤務態度の悪化
- 会社の対応:再三注意したが改善なしとして途中解雇
しかし、裁判所は次のように判断しました。
「勤務態度に問題があるとしても、指導・注意を繰り返し、
配置転換や改善の機会を与えることなく解雇したのは、
やむを得ない事由に該当しない。」
結果、途中解雇は無効とされました。
❖ 【実務対応】途中解雇を検討する前に取るべきステップ
| ステップ | 対応内容 |
|---|---|
| ① 注意・指導記録を残す | 注意書・面談記録を文書で残す |
| ② 改善の機会を与える | 指導計画や改善期間を設定 |
| ③ 業務変更・配置転換を検討 | 業務内容を変更して適性を見直す |
| ④ 更新しない方向で調整 | 契約満了時に「雇止め」で対応する方法も検討 |
| ⑤ やむを得ない事由があるか専門家に相談 | 解雇前に社労士や弁護士に確認 |
❖ 【参考】やむを得ない事由と認められやすい例
| 状況 | 判断の傾向 |
|---|---|
| 重大な規律違反(横領・暴力など) | やむを得ない事由に該当し得る |
| 長期無断欠勤・所在不明 | 該当する可能性あり |
| 経営悪化による一時的整理 | 原則不可(満了を待つ対応が基本) |
| 能力不足・勤務態度の悪化 | 原則不可(改善指導が必要) |
❖ 【補足】正社員との違い
| 比較項目 | 正社員(無期契約) | 有期契約社員 |
|---|---|---|
| 解雇要件 | 「客観的合理性+社会的相当性」 | 「やむを得ない事由」 |
| 解雇の難易度 | 難しい | さらに難しい |
| 満了時の対応 | 解雇(途中終了)扱い | 雇止め(期間満了)扱い |
❖ 実務ポイントまとめ
✅ 有期契約社員の途中解雇は「やむを得ない事由」がない限り無効
✅ 無期契約の解雇よりも厳しく判断される
✅ 注意・指導・改善機会を文書で記録しておく
✅ 契約満了での雇止め対応を優先的に検討
❖ まとめ
「やむを得ない事由」とは、契約を続けることが社会的に見ても不可能なほどの事情を指します。
安易な途中解雇はトラブルの原因となり、無効リスク+解雇予告手当支払い義務が発生することもあります。
経営判断の前に、社労士や弁護士に一度相談し、
トラブルを未然に防ぐ対応を整えておきましょう。
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