社会保険料は、通常「毎年7月に行われる定時決定」で標準報酬月額が決まります。
しかし、昇給・降給・手当の増減などで固定的賃金に変動があった場合は、
定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する「随時改定(月額変更)」が必要になります。
ただし、月額変更に該当するかの判断は、固定的賃金の変動日、3か月の平均、等級差1等級以上など、確認すべき項目が多く見落としが起きやすい部分でもあります。
そこで活用できるのが、今回の 「月額変更チェックシート」 です。
■ 月額変更チェックシートとは?
このシートは、月額変更(月変)に該当するかどうかを自動で確認できるように作成した実務向けツールです。
✔ このシートでできること
- 固定的賃金が変動した月を入力
- 変動後3か月分の給与を入力
- 標準報酬月額の計算
- 月変に該当するか自動判定
社会保険手続きの漏れを防ぎ、毎月の給与計算業務の負担を大きく軽減できます。
■ 月額変更(随時改定)の要件
判断基準は次の3つです。
① 固定的賃金の変動がある(昇給・降給・手当の増減など)
② 変動月からの3か月間の「報酬の平均」が既存の標準報酬月額と2等級以上の差
③ 3か月が「支払基礎日数17日以上」で揃っている(短時間労働者は除く)
3つすべてに該当すると、改定月(変動のあった月から4か月目)に標準報酬月額が変更されます。
■ 【事例付き】月額変更チェックシートを使った判定例
◆ 事例①:固定給が30,000円アップ → 月変の対象となるケース
- 固定給:200,000円 → 230,000円
- 変動月:4月
- 4~6月の給与
4月:230,000円
5月:230,000円
6月:230,000円
チェックシートに入力すると…
→ 3か月平均:230,000円
→ 旧等級との差:2等級以上
→ 支払基礎日数:すべて17日以上
→ 月額変更に該当(7月より改定)
ポイント
昇給が固定給であれば、月変に該当しやすい典型的なケースです。
◆ 事例②:歩合給が増えただけ → 月変には該当しないケース
- 固定給に変更なし
- 歩合給・インセンティブが上昇
- 変動月:5月
- 5〜7月に歩合給増加
チェックシートに入力すると…
→ 固定的賃金の変動なし
→ 月額変更の対象外
ポイント
歩合給・残業代などは「固定的賃金ではない」ため、
報酬が増えても月変とはなりません。
◆ 事例③:固定給アップしたが3か月の平均で2等級に届かないケース
- 固定給:180,000円 → 190,000円
- 変動月:3月
- 3〜5月の給与
3月:190,000円
4月:185,000円(欠勤控除あり)
5月:190,000円
→ 3か月平均:188,333円
→ 等級差:1等級のみ
→ 月額変更に該当しない
ポイント
欠勤や手当の増減で平均額がブレると、2等級に届かない場合があります。
■ 実務で多い “よくあるミス” と注意点
● ① 変動月を間違える
昇給通知日ではなく「支払いに反映された月」で判断します。
● ② パート社員の支払基礎日数を勘違い
短時間労働者は17日ルールの対象外です。
● ③ 賞与や残業代を含めてしまう
月変の判定は「固定的賃金」がポイント。
残業代・歩合給は含みません。
● ④ 申請忘れ
月変の場合、「改定月」に必ず手続きが必要です。
■ 月額変更チェックシートの活用でミス防止
今回のシートは:
- 判定基準を自動計算
- 3か月の平均額を即時算出
- 間違えやすい項目を項目別にチェック
- 手続き漏れの防止に役立つ
など、実務に即した構成になっています。
給与計算担当者・総務人事担当者の方には特におすすめです。
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