❖ 結論:半額負担でも「現物給与」に該当します
会社が従業員に社宅を貸与する場合、社会保険上は「現物給与」として扱われます。
たとえ従業員に家賃の一部(たとえば半額)を負担させても、現物給与の対象外にはなりません。
現物給与とは、現金以外で従業員に支給される経済的価値のあるもの(例:社宅、食事、制服など)を指します。
社宅の場合、「会社が負担した部分の家賃」が現物給与として標準報酬月額の算定に反映されます。
❖ 現物給与としての計算方法
現物給与に該当する場合、以下のように計算します。
▶ 現物給与価額の算出式
現物給与価額 = 厚生労働省告示の単価 × 居住用面積 - 従業員の負担額
社宅家賃の半額を従業員に負担させた場合でも、
会社負担分(残りの半額)が「現物給与」として通貨に換算され、
健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額に含めて申告します。
❖ 実際の事例
事例:社員寮(社宅)を利用している従業員のケース
- 社宅の時価家賃相当額:6万円
- 従業員負担額:3万円(半額)
- 居住用面積:40㎡
- 厚労省告示単価(例):1㎡あたり1,200円
この場合の現物給与価額は以下のようになります。
1,200円 × 40㎡ = 48,000円
48,000円 − 30,000円(従業員負担)= 18,000円
この18,000円が現物給与の金額となり、
標準報酬月額を決定する際に通貨支給額に加算して取り扱われます。
❖ 実務上の注意点
| 項目 | 留意点 |
|---|---|
| ✅ 算出根拠を明確に | 居住面積や単価の算定方法を明確にし、記録を残しておく。 |
| ✅ 負担割合を明示 | 就業規則や社宅使用契約書に「従業員負担割合」を明記しておく。 |
| ✅ 標準報酬月額への反映 | 現物給与額を含めた正しい報酬月額で届出を行う。 |
| ✅ 福利厚生費との区別 | 完全に福利厚生目的(全額会社負担)でも、課税・保険料上の扱いを確認する。 |
❖ よくある誤解
「従業員が家賃の半分を払っているから現物給与じゃないですよね?」
→ 誤りです。
社会保険では「会社がどの程度負担しているか」が判断基準です。
従業員が一部を負担していても、会社が残りを負担している限り、その分は現物給与に該当します。
❖ 根拠法令
- 健康保険法 第46条(現物給与の価額)
- 厚生年金保険法 第25条(現物給与の価額)
- 厚生労働省告示:現物給与の価額(毎年改定)
❖ まとめ
社宅を従業員に貸与する場合、
- 半額負担でも現物給与に該当する
- 現物給与の価額は厚労省の単価表で計算
- 標準報酬月額に反映する必要がある
このような社宅の取り扱いは、社会保険だけでなく税務上の課税関係にも関わる重要な論点です。
不明点がある場合は、専門家に確認しておくことをおすすめします。
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