結論
育児休業中でも、会社から賃金が支払われている場合には雇用保険料の負担が必要です。
ただし、育児休業給付金の支給期間中は、雇用保険の「基本手当(失業給付)」などの計算期間からは除外されます。
つまり、
💡 「給与が出ていれば保険料がかかる」/「給付金のみなら保険料はかからない」
という整理になります。
育児休業中の雇用保険料の考え方
雇用保険料は、賃金の支払いに対して課される保険料です。
そのため、育児休業中であっても会社から給与や手当(例:育児期間中の一定割合支給など)が支払われる場合は、その賃金に応じて雇用保険料を控除・納付する必要があります。
一方、賃金の支払いがない場合(無給の育児休業)は、雇用保険料の納付義務はありません。
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、雇用保険に加入している労働者が育児休業を取得した際に、
休業前賃金の67%(6か月経過後は50%)が支給される制度です。
この給付金は雇用保険料の対象外です。
また、支給を受けていた期間は「雇用保険の被保険者期間」や「基本手当の算定期間」からも除外されます。
つまり、将来失業給付を受け取る際には、育児休業期間中の日数は計算対象に含まれません。
事例①:給与の支払いがあるケース
事例
Aさん(正社員)は育児休業中ですが、会社の制度により「育児期間中手当」として月額5万円が支給されています。
結果
→ この5万円は「賃金」に該当するため、会社・本人ともに雇用保険料を負担する必要があります。
注意:社会保険(健康保険・厚生年金)は別制度で、育児休業期間中は「保険料免除」が受けられます。
一方で、雇用保険は賃金支払いの有無で判断する点が大きな違いです。
事例②:賃金の支払いがないケース(一般的なパターン)
事例
Bさん(正社員)は令和7年1月から育児休業を取得し、会社からの賃金支給はなし。
育児休業給付金のみを受け取っている。
結果
→ この場合、会社・本人ともに雇用保険料は不要です。
また、この期間は基本手当の算定基礎期間からも除外されます。
実務担当者が注意すべきポイント
- 育児期間中の賃金支給の有無を明確にする
→ 「育児手当」「在宅勤務手当」などの名称でも、性質上「賃金」と見なされる場合があります。 - 給与計算ソフトの設定を確認
→ 育児休業者の「雇用保険料算定基礎額」が自動で反映されていないケースがあるため注意。 - 被保険者資格の取扱いを誤らない
→ 育児休業中でも雇用関係が継続している限り、被保険者資格は継続します。 - 社会保険料と混同しない
→ 育児休業中の社会保険料は原則「免除」されますが、雇用保険料は「給与支払い有無」で判断します。
よくある質問(Q&A)
Q:ボーナスが支給された場合はどうなりますか?
→ 賞与も「賃金」に該当するため、その分については雇用保険料の控除が必要です。
Q:パート社員の育児休業でも同じですか?
→ はい。雇用保険に加入している限り、同様の取り扱いとなります。
根拠法令・参考情報
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第3条
- 東京労働局『雇用保険事務手続きの手引き』
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_01629.html
まとめ
| 項目 | 雇用保険料の取扱い |
|---|---|
| 賃金支払いがある場合 | 雇用保険料を負担する必要あり |
| 賃金支払いがない場合 | 雇用保険料は不要 |
| 育児休業給付金の期間 | 基本手当等の算定基礎期間から除外 |
| 被保険者資格 | 育児休業中も継続 |
初回相談は無料です
育児休業中の手続きや給与計算、保険料控除の判断に迷う場合は、専門家にご相談ください。
制度誤りによる遡及修正や労働局からの指摘を未然に防ぐことができます。