労務管理

【実務解説】SOGIハラスメントとは?具体的な行為例と企業が取るべき防止措置|ひらおか社会保険労務士事務所

近年、企業に求められるハラスメント防止の中でも、
特に重要性が高まっているのが SOGI(ソジ)ハラスメント です。

SOGIとは、
Sexual Orientation(性的指向)
Gender Identity(性自認) の頭文字を取った言葉で、
性的指向や性自認に関する嫌がらせ・差別を指します。

本記事では、企業担当者に向けて
具体的な行為例・リスク・防止措置・相談対応のポイント をわかりやすく解説します。

■ SOGIハラスメントとは?

SOGIハラスメントとは、性的指向または性自認に関して
侮辱的言動、差別的取扱い、からかい、本人の同意なく暴露(アウティング)する行為
などを指します。

厚生労働省の指針でも、
職場におけるハラスメント防止措置の対象 として明確に位置づけられています。

■ SOGIハラスメントに該当する具体的な行為例(実務で多い)

● 1. 性的指向・性自認に関する侮辱やからかい

  • 「男のくせにそんな格好するなよ」
  • 「女らしくないね」「本当に彼氏いるの?」
  • からかい口調で性的指向を詮索する

● 2. 好きな性別についての不必要な質問

  • 「彼氏(彼女)いるの?」と異性愛を前提に聞く
  • 「結婚する予定は?」と価値観を押しつける

● 3. 性自認を無視した呼称の強要

  • 本人の意向に反して
    「本名で呼ぶ」
    「戸籍上の性で呼ぶ」
  • 呼称・服装・トイレ利用などで不利益を与える

● 4. 性的指向や性自認を理由とする差別的な人事

  • 昇進から外す
  • 一部の業務から除外する
  • 配置転換・異動の不利益取り扱い

● 5. 【重大行為】本人の同意なく他者へ暴露(アウティング)

  • 「あの人は○○らしいよ」と周囲に伝える
  • 上司が家庭に電話し、性的指向を伝えてしまう
  • 総務担当者が不必要に社内へ情報共有してしまう

➡ アウティングは、
精神的ダメージが極めて大きく、労災にも発展する重大なハラスメント
として扱われます。


■【実務事例】実際に企業で起きやすいケース


◆ 事例①:上司が飲み会でからかい発言

ある従業員が飲み会で「恋愛は男性が好き」と話したところ、
上司が翌日から周囲に言いふらし、からかいの対象になった。

→ 対応ポイント

  • 「飲み会で聞いた情報でも、本人の同意なく第三者へ伝えるのはNG」
  • 管理職研修で “飲み会も職場” の意識を共有する必要あり

◆ 事例②:性自認を理由に異動から外された

性別違和を抱える従業員が、接客部門から事務に回された。

→ 対応ポイント

  • 性自認を理由にした配置変更は不利益取扱いとなり得る
  • 本人の意思を確認せず、会社判断のみで異動させるのは危険

◆ 事例③:勤怠担当者が本人の性自認を同僚に漏らしてしまった

健康保険証の性別がきっかけで同僚に話してしまったケース。

→ 対応ポイント

  • 事務担当者による情報漏洩(アウティング)は重大な職場トラブル
  • 個人情報として厳格に管理し、取り扱いルールを明文化することが重要

■ 企業が取るべき「SOGIハラスメント防止措置」

企業には、労働施策総合推進法に基づき、
パワハラ・セクハラ同様に防止措置義務 があります。

✔ 1. 就業規則・ハラスメント規程の明文化

  • SOGIハラスメントを禁止する条項
  • アウティング禁止を明記
  • 相談窓口の設置

✔ 2. 管理職研修の実施

  • 不用意な言動の危険性
  • 「つい聞いてしまう」「飲み会での発言」などの注意点

✔ 3. プライバシー保護の徹底

  • 個人情報として管理
  • 勤怠・保険手続き担当者にも研修が必要

✔ 4. 相談窓口・調査対応の体制整備

  • 匿名相談の受付
  • アウティングの禁止を徹底
  • 迅速な事実確認と再発防止

✔ 5. 少数者の立場に配慮した職場づくり

  • トイレ・更衣室の使用ルール
  • 性別欄の扱い(必要性の見直し)

■ 相談が来たときの企業の対応ポイント

① 相談内容を外部に安易に話さない(アウティング防止)

上司や総務担当者の不用意な発言が二次被害につながります。

② 「相手の価値観を否定しない」ことが重要

話を遮ったり、矯正するような言動はNG。

③ 迅速に事実確認 → 必要に応じて配置・業務調整

不利益取扱いが続くと法的責任が生じる可能性があります。

■ 根拠法令・参考資料


■ まとめ

SOGIハラスメントは、
「知らないうちにやってしまう」リスクが極めて高いハラスメントです。

特にアウティングは重大な権利侵害であり、
企業が適切な対策を講じない場合、法的責任を問われることもあります。

従業員が安心して働ける環境づくりは、企業の重要な義務です。
就業規則の整備や管理職研修など、早めの対応をおすすめします。

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