労務管理

【事業主向け】病気休暇制度とは?従業員の“安心”が定着率と生産性を高める仕組み|ひらおか社会保険労務士事務所

従業員が体調を崩したとき、年次有給休暇だけで本当にカバーできているでしょうか?

  • 「有休が残っていないので休めない」
  • 「感染症の疑いなのに無理して出社してしまう」
  • 「病気療養中なのに給与が心配」

このような状況を放置すると、従業員の不安・休職・離職につながり、企業にとっても大きな損失となります。

そこで今注目されているのが、年次有給休暇とは別に取得できる「病気休暇制度(特別休暇)」 です。
厚生労働省もその導入を推奨しており、制度の必要性は年々高まっています。

この記事では、
・病気休暇制度の概要
・導入状況(統計)
・モデル企業の導入事例
・就業規則の書き方
・中小企業での実務ポイント

をわかりやすく解説します。

1. 病気休暇制度とは?(年次有休とは別の“特別休暇”)

病気休暇制度とは、
従業員が私的な負傷・疾病で療養が必要となった場合に取得できる特別休暇
のことです。

■ 病気休暇を設けるメリット

厚労省リーフレット(2ページ/)では次の点が強調されています。

  • 有休残日数を気にせず休める
  • 感染症など突発的な休みに対応できる
  • いざという時の“セーフティネット”になる
  • 安心して働ける職場づくりにつながる
  • 結果的に定着率向上・生産性向上にも寄与する

特にコロナ禍を経て、
「病気のときに安心して休める環境」
の重要性は一気に高まりました。

2. 導入状況(統計)──企業はどれくらい導入している?

■ 導入企業割合

厚労省の統計(3ページ)によると…

  • 導入している企業:23.8%
  • 導入していない企業:76.2%

全体ではまだ少ないものの、
約4社に1社が“何らかの病気休暇”を導入しています。

■ 賃金の取り扱い(導入企業955社の内訳)

  • 有給(全額):44.5%
  • 有給(一部):18.1%
  • 無給:37.4%

半数近くが「有給」で運用しています。

■ 従業員はどう思っている?

労働者5,000名の調査(3ページ/)では…

  • あってほしい:60.8%
  • どちらかといえばあってほしい:22.7%

合計 83.5%の従業員が“病気休暇制度を望む” という結果。

3. 病気休暇制度の導入事例(厚労省掲載企業)

リーフレット3ページには2社の事例が示されています。

【導入例①:A社】

年次有給休暇とは別に、社員本人・家族の病気に対して「5日間の有給病気休暇」を付与。

  • 感染症などの突発的な理由にも対応
  • 有休を使い切った後でも取得できる
  • 従業員からの安心感が大きい

👉 家族も対象に含める点が特徴。介護事業・医療業界との相性も◎


【導入例②:B社】

短時間の外来・検診にも対応するため「1時間単位」で病気休暇を取得可能。
通算10日までは有給扱い。

  • 長期休職+短期の“通院休暇”を組み合わせた運用
  • 復職後の治療との両立を支援

👉 治療と仕事の両立が必要な従業員への支援として非常に有効。

4. 就業規則の記載例(厚労省モデルを社労士アレンジ)

リーフレットの記載例(3ページ)をベースに、実務で使いやすい形にカスタマイズ。

▶【就業規則案】病気休暇

(病気休暇)
第○条

  1. 労働者が負傷又は疾病により療養を要し、勤務が困難であると認められる場合、病気休暇を○日付与する。
  2. 病気休暇の期間中の賃金は、(全額支給/一部支給/無給)とする。
  3. 病気休暇の取得には、会社所定の様式により申請を行い、必要に応じて診断書の提出を求めることがある。
  4. 病気休暇は年次有給休暇とは別に付与する。
  5. 通院や検診等の短時間勤務が必要な場合は、(1時間/半日)単位で取得できるものとする。

5. 中小企業が導入する際のポイント(社労士の実務アドバイス)

① 「有給・無給」の判断は慎重に

  • 小規模企業では「無給+半日単位」など段階的導入も可能
  • 社員満足度向上を重視する場合は有給が効果的

② 取得要件を明確に

  • 「療養が必要と会社が認める場合」
  • 「診断書の提出を求める場合がある」
    など記載するとトラブル防止に。

③ 1時間単位の短時間取得も非常に有効

  • 通院・検査への対応に好評
  • 業務調整もしやすい

④ 家族の病気も対象にするか

  • 医療・介護業界では「家族の入院」「看護」対応のためニーズ大
  • 企業の実態に合わせて調整可能

⑤ 休職制度との連携設計

  • 「短期=病気休暇」
  • 「長期=休職制度」
    と区別すると運用がスムーズ。

6. 【実務事例】社労士として関わった中小企業のケース

■ ケース①:介護事業(従業員25名)

  • 5日間の有給病気休暇を導入
  • 家族の病気も取得理由に追加
  • 感染症リスクの高い職場のため、従業員から高評価
  • 結果:無理な出勤が減り、離職率が改善

■ ケース②:製造業(従業員80名)

  • 通院のための「1時間単位病気休暇」を導入
  • 検診・整形外科通院など、細かな事情に対応
  • 結果:遅刻・早退が減り、生産性が向上

7. まとめ:病気休暇制度は“働きやすさ”と“企業の信頼性”を高める仕組み

病気休暇制度は、
従業員の安心 × 企業の安定 × 定着率向上
の三つを叶える制度です。

とくに医療・介護・飲食など、欠勤が業務に直結する業種では効果大。
企業規模に応じて「日数」「賃金」「対象範囲」を調整できるため、導入しやすいのも特徴です。


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