労務管理

【実務解説】ノー残業デイに隠れて仕事をしている従業員が発覚…黙認してよい?|ひらおか社会保険労務士事務所

毎週◯曜日を「ノー残業デイ」に設定している企業は多くあります。
しかし、現場でよく起きるのが次のような問題です。

「ノー残業デイなのに、会議室や自席でこっそり仕事をしている従業員がいる…」
「見て見ぬふりをしてよいのか?」

結論としては、


❌ 黙認すべきではありません。


ノー残業デイであっても、会社が従業員の労働実態を把握していない場合、
労働時間管理義務違反
割増賃金の未払い(労基法違反)
安全配慮義務違反のリスク
につながります。

この記事では、実務で企業が取るべき対応をわかりやすく解説します。


1. 黙認してはいけない3つの理由

① 使用者には「労働時間管理義務」がある

会社は、従業員が実際に働いた時間を把握する義務があります(厚労省ガイドライン)。
ノー残業デイであっても、その日に働いていれば労働時間として扱う必要があります。

✕ 「今日は残業禁止だからカウントしない」
○ 「働いた事実があれば労働時間として管理する」

黙認すると、労働時間を適正に把握していないこととなり、会社の義務違反となるおそれがあります。


② 隠れ残業の割増賃金を支払っていないと労基法違反

隠れ残業の結果、実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、
割増賃金(25〜60%)を支払う必要があります。

未払いがあると、「サービス残業」として労基署から是正勧告を受ける可能性があります。


③ 過労死・メンタル不調が発生した場合、会社の責任が問われる

もし、長時間労働が原因で健康被害が起きれば、

  • 会社は実態を把握していた(または把握できた)
  • ノー残業デイの裏で働いていたことを放置していた

と判断され、
安全配慮義務違反(労働契約法5条)として賠償責任を負うリスクがあります。

2. 【実務事例】よくある「隠れ残業」のトラブル

◆ 事例①:ノー残業デイに残って作業 → 未払い残業として是正指導

あるIT企業では、形式的に「ノー残業デイ」を導入していたが、
実際には多くの社員が19時以降も会議室などで作業していた。

  • 打刻は18時で退勤
  • PCログは20時まで稼働
  • 上司も状況を把握していたが黙認

労基署の調査で発覚し、
2年分の未払い残業代を支払うことに。
さらに再発防止計画の提出も求められた。


◆ 事例②:隠れ残業の常態化 → メンタル不調で労災認定

営業職の従業員が、ノー残業デイに帰った後、
自宅で深夜まで作業していたことが発覚。
上司は「頑張ってくれている」と評価していたが、管理はしていなかった。

その後メンタル不調で休職 → 労災認定。
会社は安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けた。


3. 企業が取るべき「正しい対応」

✔① 隠れ残業の事実を把握する

  • PCログ
  • 入退室記録
  • メール送信時刻
    などから勤務実態を客観的に確認します。

✔② 労働時間として正しく記録し、割増賃金を支払う

実際に働いていた分は、必ず労働時間として扱う必要があります。


✔③ なぜ隠れて働くのか、業務量・体制を点検する

隠れ残業の背景には、以下の課題があることが多いです。

  • 業務量が多すぎる
  • ノー残業デイが形骸化している
  • 残業申請が通りにくい
  • 上司が実態を把握していない

根本原因の改善が重要です。


✔④ 上司への働きかけ(マネジメント教育)

ノー残業デイを成功させる鍵は、現場管理者の運用力です。

  • 部下の業務状況の把握
  • 適切な業務配分
  • 帰社指導
  • 労働時間管理の法的理解

これらが不足していると、ルールは形だけになります。


✔⑤ 就業規則・残業ルールの社内周知

「ルールを守らなければ評価対象外になる」など、
適正な運用を後押しする仕組みも検討できます。


4. まとめ

🔍 結論:ノー残業デイでの隠れ残業は黙認してはいけない

  • 会社には「労働時間管理義務」がある
  • 隠れ残業=サービス残業となり労基法違反
  • 過労死・メンタル不調が起きれば、会社の法的責任が大きい
  • 背景の業務量・体制の見直しが不可欠

ノー残業デイは「働かせない日」ではなく、
労働時間管理と業務改善の仕組みとして使うことが重要です。


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