労務管理

【実務解説】フレックスタイム制のコアタイム中に「時間単位年休」は取得できる?|ひらおか社会保険労務士事務所

フレックスタイム制を導入している企業からよくいただく質問のひとつが、

「コアタイム中に時間単位年休を使って休むことはできますか?」

というものです。

結論から言うと――


■ 【結論】コアタイム中でも「時間単位年休」は取得できます

時間単位年休を導入している場合、
コアタイムを理由として「時間単位年休」の取得を禁止することはできません。

労働基準法39条および基発0529001号(平成21年通知)では、

  • 就業規則の定め
  • 労使協定の締結
    によって時間単位年休を導入できるとされていますが、

特定の時間帯(例:コアタイム)を取得禁止にする定めを置くことは認められていません。


■ なぜコアタイムでも取得できるのか?

厚労省通達では、

あらかじめ時間単位年休の取得ができない時間帯を設けることはできない
と明確に示されています。

つまり、

  • 「10時〜15時のコアタイムは取得禁止」
    といったルールは 不可

ただし、事業運営に支障が出る場合は、
時季変更権の行使(=取得日の変更) によって対応は可能です。

※ ただし、時季変更権は
個別的・具体的・客観的な理由がある場合に限られます。
(例:どうしても外せない会議・顧客対応・店舗運営上の支障など)

■ 【事例で理解】どのようなケースで取得できる?できない?


◆ 事例①:会議が重なるコアタイム中に「1時間だけ年休を使いたい」

→ 原則、取得可能

10時〜15時がコアタイムの会社で、
従業員Aさんが次のように申請した場合:

「13時〜14時の1時間だけ、時間単位年休を使って外出したい」

これは 原則認める必要があります。

ただし、以下のような事情がある場合は「時季変更権」の対象になり得ます。

  • 重要な顧客との打ち合わせが13時〜14時に設定されている
  • その従業員が不在だと事業運営に重大な支障をきたす

◆ 事例②:「コアタイム中は全員が必ず在席すべき」という会社の方針がある

→ その趣旨だけでは取得禁止にはできない

就業規則で

「コアタイムは全員が勤務している時間帯とする」
と定めていたとしても、
時間単位年休の法的ルールの方が優先されます。

そのため、
「コアタイムだからダメ」という包括的な拒否は不可 となります。


◆ 事例③:店舗のランチピークで人手不足になる時間帯に申請

→ 具体的な支障があれば変更可能(時季変更権)

たとえば飲食店で

  • 12時〜14時は店舗が繁忙
  • その時間帯に人員が不足すると営業が成り立たない

このような場合は、
客観的な理由があるため「別の時間に変更してほしい」とすることが可能です。

■ 実務担当者が押さえるべきポイント

✔(1)就業規則に「時間単位年休を採用する」旨を明記

  • 時間単位年休の付与日数
  • 対象従業員
    などを規定。

✔(2)労使協定(時間単位年休協定)の締結が必須

協定なしでは導入できません。

✔(3)時間帯をあらかじめ制限する規程は不可

「コアタイム不可」「昼の時間帯不可」などの包括的禁止は認められません。

✔(4)事業運営に支障がある場合だけ「時季変更権」を個別行使

理由の説明、記録の保存が望ましいです。


■ 根拠法令

  • 労働基準法 第39条(年次有給休暇)
  • 平成21年5月29日 基発0529001号
    (時間単位年休の運用に関する厚労省通知)

■ まとめ

項目結論
コアタイム中の時間単位年休取得✔ 原則可能
コアタイムだから一律拒否✖ 不可
事業運営に具体的支障がある場合✔ 時季変更権で調整可能
必要な手続き就業規則の定め+労使協定

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