フレックスタイム制を導入している企業から、次のような相談をよくいただきます。
「清算期間は1か月。休日出勤の代わりに振替休日を設定したものの、その振替日が翌月にずれ込みます。この場合の給与計算はどう処理すべき?」
結論としては、
👉 清算期間をまたぐ場合でも、法律上は以下のどちらの方法でも対応可能です。
フレックスタイム制は、「清算期間内」で労働時間の過不足を調整する制度ですが、
振替休日が期間外に入るケースは実務で頻発します。
この記事では、給与計算の具体的な仕組みと、企業で起きがちなトラブルをわかりやすく解説します。
1. フレックスタイム制における「清算期間外の振替休日」の基本考え方
フレックスタイム制(清算期間1か月)の場合、
その月の労働時間を確定させる必要があります。
しかし、休日出勤があった場合に振替休日が翌月にずれると、
- 今月:休日労働が発生
- 翌月:振替休日で労働時間が減少
というズレが生じるため、調整が必要になります。
厚労省の考え方に沿うと、次の2つの方法が実務上認められています。
2. 【給与計算の方法】清算期間外に振替休日がある場合の2つの処理方法
📌【方法①】休日出勤を含めた実労働時間で清算期間内の給与を確定する
(割増賃金が発生する場合は支払う)
▼ 具体的には:
- 休日出勤 → 当月の実労働時間に追加
- その結果、法定労働時間を超えれば割増賃金を支払う
- 振替休日は翌月の労働時間として処理する(翌月の労働時間が減る)
➡ もっともシンプルで実務で最も採用されている方法です。
📌【方法②】翌月に振替休日を付与し、翌月の所定労働時間との差分を調整する
(不足すれば賃金控除 または 不足分の追加勤務で相殺)
▼ 具体的には:
- 当月:休日出勤を行った分だけ実労働時間は増える
- 翌月:振替休日を取得し、労働時間が減る
- 結果として翌月の所定労働時間を下回った場合
→ 賃金控除するか、翌月に追加勤務で調整する
➡ 会社の給与ポリシーによって選択できます。
3. 【実務でよくあるトラブル事例】
◆ 事例①:休日出勤に割増を払わず「翌月休むからOK」と誤解し、是正勧告
A社では、休日出勤をさせた際に振替休日を翌月に設定していたが、
- 「振替休日があるから割増賃金は不要」と誤解
- 当月の休日労働に対する割増(35%)を支払っていなかった
結果として、労基署の調査で未払い残業として指導を受けた。
◆ 事例②:翌月に振替休日をとったら所定労働時間を下回り、賃金トラブル
B社では、「方法②」を採用したが、
- 従業員のシフト調整が難しく、翌月の労働時間が大幅に不足
- 所定労働時間を下回ってしまい、賃金控除を行ったところ
- 従業員から「不利益だ」と申し出がありトラブルに…
フレックス制では「月単位で総労働時間が確定する」ため、
どの方法を採用するかの事前ルール化と周知が非常に重要です。
4. 実務での対応ポイント(企業が押さえておくべき点)
✔① 休日出勤は必ず当月の労働時間に加算する
フレックス制であっても、「休日労働は休日労働」。
割増賃金の支払い要否はその月で判断します。
✔② 翌月の振替休日による労働時間不足への取扱いを就業規則に明記する
方式の例:
- 「所定労働時間を下回る場合は賃金控除する」
- 「不足分は翌月の勤務で調整してもよい」
明文化しないと給与説明のトラブルが発生しやすいです。
✔③ 従業員に「清算期間の仕組み」を説明する
特にフレックスタイム制は、運用を誤ると違法状態になりやすい制度です。
振替休日の扱いは複雑なため、事前周知が必須です。
5. まとめ|どの方法も可能だが、ルール化と周知が必須
🔍 結論
清算期間外に振替休日を設定した場合の給与計算は、
① 当月の休日労働を労働時間に含めて割増賃金を支払う
② 翌月に振替休日取得後、所定労働時間との差分を調整する
のいずれでも法的に認められています。
しかし、実務では
トラブル防止のため、事前にルール化し就業規則へ反映すること
が非常に重要です。
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